長男には今ひとつ響かなかったようですが。
映画「キック・アス」のHit-Girl役以来、私がずっと注目しているChloë Grace Moretzですが、最近まで撮影に参加していたのは”If I Stay“という作品でした。「クロエ・モレッツちゃんが生死の境い目で幽体離脱するスーパーナチュラルな青春映画」というのがなんとも怪しげですが、Chloëならそんなろくでもない映画に出ることはないだろうと思い、まずは予習を兼ねて公開前に原作を読んでおこう、ということで読んでみたのが、Gayle Forman作で映画のタイトルと同じ原作”If I Stay“の日本語版、「ミアの選択」です。
小学館
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ヤングアダルト向けの小説ということで全256ページ、文字も大きめということで軽く読めるようになっており、私も数時間で読み切ってしまいましたが、内容の方はなかなか重いものがあります。
チェロの才能を持ち、音楽の名門ジュリアード学院への入学を控え、完璧なボーイフレンドがいて、大好きな家族と幸せに暮らしていた主人公のミアが、家族でのドライブ中に事故に遭い、両親は即死、歳の離れた弟と自分は重体で病院に運ばれるのですが、この時ミアの精神は肉体を離れてこの様子を客観的に眺めている、というあたりが「幽体離脱」「スーパーナチュラル」というところです。そしてこの後のストーリーは病院で処置を受ける自分と周囲の人達の「現在」と、これまでの「思い出」とが交互に織り交ざって進行しますが、最終的には昏睡状態から息を吹き返すのか、そのまま死んでしまうのかは本人の選択次第で、それをどうするべきか2つの間でミアの判断が揺れる、というのが本作の主題です。
ティーンエイジャー向けなので甘酸っぱい内容も多く、本来は私のようなオッサンが読むような本ではないのでしょうが、特に終盤にはちょっとしたセリフがグッと来て目頭が熱くなってしまうこと数回、なかなか侮ってはいけません。病院での緊迫した状況が簡潔ながらうまく描かれているせいでしょうか。しかしきっとこれは英語で映画を観てもストレートには伝わってこなかったでしょうから、原作を読んでおいて良かったと思います。また、日本で見られる場合も字幕より吹き替えの方が感動が得られやすいのではないでしょうか。私は台詞による表現も役者の演技のうちだと思っているので吹き替えはあまり好きではないのですが、この場合は別かもしれません。
ということで本作の内容自体には十分満足したのですが、このボリュームで1400円+税というのはちょっと高く感じられてしまうというのも事実です。原書はAmazon.comでペーパーバックなら$8.99、Kindle版は$7.99で売られていますが、日本でも映画の公開が近づいて文庫版などが出ればもっと手頃な値段になるでしょうか。活字離れなどといいますが、そろそろ再販制を見直すべき時なのではないかという気もします。
なお、映画化については当初「トワイライト~初恋~」を監督したCatherine Hardwickeが予定されていたので、トワイライト・サーガでは一作目が一番いいと思っている私は非常に期待していたのですが、あえなく降板してしまい、最終的にはドキュメンタリーを専門とするR. J. Cutlerが当たることになりました。「幽体離脱」が一体どのように表現されるのか不安なところはありますが、リアリティのある映像にしあげてくれる可能性もあり、それはそれで楽しみでもあります。全米公開は今年8月の予定ですが、さてさてどうなることでしょうか。