Twilightオカルトファンにもそうでない人にも

最近はあまり見かけなくなったような気がしますが、20年ほど前までは洋楽タイトルには時折ヘンテコな邦題が付けられていました。私にとっての極めつけは、Sting率いるThe Policeのヒット曲”Don’t Stand So Close To Me“で、この曲には「高校教師」という邦題が付けられていました。当初私は原題の方しか知らなかったので「The Policeのヒット曲『高校教師』」と言われても何のことだかさっぱりわからなかったのですが、確かに歌詞やPVでは高校教師と生徒との恋愛が主題とはなっているものの、そんな身も蓋もない邦題でいいものかと思ったのが忘れられません。

音楽の方は洋楽がそれほど特別なものではなくなったためか、いちいち邦題を付けることも稀になったのですが、意味がわからなくてもメロディーだけでも楽しめる音楽とは違い、ストーリーが重要な映画の場合には未だ苦労が絶えないようです。確かに「リバー・ランズ・スルー・イット」などのように原題をカタカナ表記にしただけでは内容が伝わらず、かといって直訳してもその言葉が日本語では一般的ではなかったりするので仕方がないかもしれません。それにしても「トワイライト~初恋~」の「~初恋~」の部分は余計ではないでしょうか。この余計なオマケのせいでオッサン一人では観に行きづらかったではないですか。

乾燥地帯として有名な大都市アリゾナ州フェニックスから、全米一雨の日が多いというワシントン州の小さな町フォークスに引っ越してきた内気な高校生Bellaと、転校先で同級生となったEdwardの二人による恋の物語…というと単なる青春ラブストーリーとしか思えないのですが、このEdwardが実はヴァンパイアであるとなると全く話が違ってきます。おそらく観ている人は皆それを知っているでしょうから、Bellaがいつどうやってそれに気付くのかというところが微妙で難しいところではないかと思いますが、これについてはそれほど無理のない展開でした。

もともとイギリスでは「ハリー・ポッター」シリーズに次ぐ大ベストセラーとなっている小説を原作としているのですが、主な対象が10代の少女であるためか日本での知名度は高くありませんね。映画の方もアメリカなどでは好成績を収めているようですが、日本での興行成績は今一つと言ったところのようです。しかし、実際に観たという人の評判はかなり高く、落ち着いた破綻のない作りで子供向けにしておくのはもったいないと言ったところのようだったので私も期待していたのですが、その期待を上回る良作で非常に楽しめました。

映像は全体的に青みがかった暗いトーンとなっていて、それがフォークスという町の陰気な印象とヴァンパイアという神秘的な存在とを上手く表現しているようです。また、ヴァンパイアの超人的な運動能力や格闘シーンの表現にはワイヤーアクションその他の特殊効果が使われていますが、それも節度のある使われ方なので現実感をあまり損なわずに済んでいるように思われます。

Alice Cullen主役のヒロインBellaを演じているのはKristen Stewartで、結構キャリアは積んでいるようですが、出演作は日本未公開のものが多いようなのであまり馴染みがありませんね。特に可愛いわけでもないような気はしますが、演技力はなかなかだったと思います。一方ヴァンパイアは一般的にその容姿の美しさも特徴とされていますが、主役のEdwardは「ハリー・ポッター」シリーズでCedric Diggoryを演じていたRobert Pattinsonで、日本人の美的感覚とはちょっとずれているような気はするものの、これが欧米の少女の理想の男性像なのかもしれません。その他のヴァンパイアも美形揃いなのですが、私が気に入ってしまったのはEdwardの義姉Aliceを演じているAshley Greeneです。ショートカットのダークな髪が私の好みにマッチしてしまっただけのような気がしないでもありませんが、髪の長いときの写真を見ても美しいです。

それはともかく、原作は4部作となっていて、今回映画化されたのはその第1部ということであり、また今作の終わり方はいかにも続編を予期させるものとなっていましたが、第2部”New Moon“は現在制作中で年内に公開予定のようです。今作の出来からすると続編にも期待が寄せられるところですが、同じ路線を踏み外さずに作ってもらえれば上手くいくのではないでしょうか。また原作の方もぜひ読んでみたいと思ったのですが、日本語版のいかにも少女向きな装丁と、4部作の原作をなぜか13冊にも分けてしまっているところに少々萎えてしまいました。文庫版の方は原作に準じた装丁でかつ各部上下巻となっているようなのでいいのですが、まだ第2部までしか発行されていないようですし…どうしたものでしょうか。