旧山邑家住宅贅沢とは無駄の別名

もう4日も前の話になってしまいましたが、つい先日のクレイジーケンバンドのライブの日、せっかく神戸まで行くのだからどこかへ行こう、ということで後輩Mが提案したのは「ヨドコウ迎賓館」でした。私も寡聞にして知らなかったのですが、近代建築の三大巨匠の一人、Frank Lloyd Wrightの作品ということなので私も俄然興味が湧き、男4人で行くところではないような気がしつつ、また建築には特に興味のなさそうな他の2人のことは気になりつつも行かずにはいられないような気になり、ライブ前だというのにカメラ片手に出掛けてきました。

Wrightの作品として完全な形で残っているのは日本ではこれだけということで、それだけでもかなり貴重な物であるのは間違いありませんが、駐車場や道路から見上げる姿もただ者ではありません。近づいてみるとWright独特のマヤ調の雰囲気を持つ幾何学的な天然石の装飾が随所に施された外壁が何とも贅沢な感じです。打ちっ放しのコンクリートのような冷たさはなく、ベージュ系の肌合いが暖かみを感じさせます。

名前からもわかる通り現在は物置やカラー鋼板で有名なヨドコウの所有になっていて、水・土・日・祝日は一般公開されていて館内も見学することができます。「迎賓館」という名前になってはいても実際に迎賓館として使われたことはないようで、もとは造り酒屋の山邑氏の依頼により私邸として建てられた物で、その後ヨドコウの所有となり社長公邸となったり独身寮となったりしたようです。こんな素敵な独身寮なら一生住んでいたいものですが、実は寮とは名ばかりで社長の御曹司が一人で住んでいたのではないかなどと邪推してしまったりもします。
山邑家住宅のモチーフ
さておき500円の入館料を払って館内に入るとまた随所に施された装飾や複雑な構造に息を呑むばかりです。基本的に曲線は使われておらず、全て四角形を組み合わせた意匠となっているのですが、様々なところでモチーフとして使用されているのが左のパターンです。こんな青銅版が垂壁にあしらわれていたりして実に洒落ています。また和室の壁に設けられた窓もとてもいい感じではないでしょうか(室内の写真は許可を得て撮影しています)。ちなみに、もちろんWrightは和室など設計するわけもなく、日本人の高弟が設計したものだそうです。
山邑家住宅和室の窓
私が最も気に入ったのは、この3室続きの和室の中央の部屋から廊下に出る部分です。この和室は廊下よりもちょっと高い位置にあるのですが、廊下に繋がる数段の階段部分がステージのようになっており、さらに廊下の窓から外の緑を見下ろすような格好になっていて、何とも気持ちのいい空間となっているのです。私は思わず数分間そこで佇んでしまいましたが、これだけでも500円の価値はあったかもしれません。

また、屋上にも出ることができるのですが、海を見下ろす芦屋の斜面の一等地に建っており、晴れ渡った青空の綺麗な日であったということもあってとても気持ちが良かったです。こんなところに住めたらどんなに幸せでしょうか。まあその代償も大きいのかもしれませんが…

ともかく私は写真も撮りまくって楽しんできました。完全に穴場スポットだとは思いますが、カップルもチラホラといて静かなデートを楽しんでいるようでした。なんだか高尚な感じがいいですが、趣味の合う二人でないと辛いでしょう。しかし、これからクレイジーケンバンドのライブに行くという日にこういう建物を見に行くという人もそうはいないでしょうね。まあそんなことを気にする私ではありませんが。