定年後は喫茶店をなんて夢もいいですが…

学生時代にはほとんどの人が何かしらのアルバイトを経験しているのではないかと思いますが、アルバイトの種類にも様々な職種があります。私は夏休みや春休みに短期のアルバイトで集中的に稼ぎ、普段はサークル活動に…って勉強はいつ?という感じですが、ビル掃除から冷凍倉庫、コンビニ、喫茶店、羽田空港の土産物店、家庭教師にテレビのエキストラや宅配サンタ、お中元・お歳暮の配達まで、本当に様々な職種を経験しました。仕事をしてお金を貰うからにはそれぞれ自分なりに一生懸命働きましたが、やはりそれなりに楽な仕事、辛い仕事というものがありました。

そんな中で色々な意味でいたって普通のアルバイトだったのは喫茶店やカレー店という飲食店のホールスタッフでしょうか。客としても普段から目にすることの多い職業なので、仕事内容もかなり想像できるものかと思いますが、やはり自分で働いてみるとその店ごとに工夫やしきたりがあったりして面白いものです。そういった店ごとの特徴というのはそれまでの経験により培われてきたものであり、その店の財産でもあるのでしょうが、これから店を持とうという人は一体どうしたらいいのか、何を考えておかなければいけないのかということもなかなかわからないものでしょう。

今回読んでみた「ランチは儲からない飲み放題は儲かる―飲食店の『不思議な算数』」という本は、自ら脱サラして飲食店を始め、その後お店のプロデューサー、コンサルタントとして活躍しているという著者が、飲食店の舞台裏について、飲食店経営者の立場で教えてくれるなかなか面白い本でした。

普通のサラリーマンには飲食店を始めるためにはどれだけの資金が必要か、月々の売り上げと経費はどの程度のものなのか、飲食代に占める食材費は何パーセントぐらいなのか、などなどといったことはよくわからないのではないでしょうか。私も日頃そんなことは全く考えずに飲食店を利用してきたわけですが、この本を読んでからはちょっと意識が変わってしまうような気がします。

著者によると、飲食店にとってはたった一人の客でも非常に貴重なもので、その一人によって年間の利益が大きく変わってくるのだということです。客の立場からすると、自分一人のたかだか2000円程度の代金での利益なんてすぐに消し飛んでしまうのではないかと思っていましたが、その代金もその人が来なければ全くなかったことになってしまうわけで、結局はその積み重ねでお店は成り立っているのだということです。そういう風に言われると、気に入ったお店にはどんどんお金を落としていかなければいけないような気になってきました。

また、タイトルにもある「ランチは儲からない 飲み放題は儲かる」というのは思っていた通りのことでしたが、ビールやワインは原価率が高く客にとっては得、チューハイやウーロン茶は原価がかなり安く店にとって割がいい、というのも当たり前のことながら改めて認識してしまいました。そう言われるとこれからウーロン茶を頼むのが癪に思えてきますが、下戸の私は無理してアルコールを摂っても仕方がないので諦めるしかありません。

全編を通じて書かれていて印象に残っているのは、客を大事にすること、客を呼ぶのは大変だということ、結局接客業の基本はやはり接客なのです。当たり前のことですが、ごく稀にそういう基本ができていない店に出会って憤ることがありますが、そういう店は潰れていって然るべきなのでしょう。