Google皆はGoogleに何を求めているのでしょうか。

私はNHKが嫌いです。最近はテレビ番組自体ほとんど見ることがありませんが、特にNHKは見ません。自分にちゃんねるの選択権がないときは仕方なく見るときもありますが、ほとんど忌避していると言ってもいいでしょう。受信料の問題もありますが、番組の作り自体が好きになれません。単に好みの問題なのだとは思いますが、生理的に受け付けないというか、誰にでもわかるように説明しなければならないためか、くどく感じてしまいイライラするのです。それでも子供が夕方の番組を見るというので受信料はちゃんと払っています。

ただ、そうは言ってもNHKでなければできない番組作りというものもあります。民放の場合は視聴率が取れなければ仕方ありませんし、スポンサーの機嫌を損ねるわけにもいかないので、色々なところに迎合した都合のいいものになってしまいがちですが、受信料で成り立っているNHKの場合には視聴率以上に重視される使命感のようなものがあるのでしょう。私はそう信じたいところですが、今回読んだ「NHKスペシャル グーグル革命の衝撃」という本は、その名の通りNHKの看板番組の一つである「NHKスペシャル」の「“グーグル革命”の衝撃 あなたの人生を“検索”が変える」での取材内容を本にまとめたものです。

グーグル革命の衝撃 (NHKスペシャル)
著:NHK取材班
日本放送出版協会 (2007/05)
ISBN/ASIN:4140811927

私は特にGoogleを研究しているつもりではないのですが、最近いつのまにか色々とGoogleに関する本を読んでいます。その本によって視点は様々で、Googleを賞賛するようなものもあれば批判的な立場のものもあり、実際Googleが私たちの生活に与える影響も素晴らしいものもあれば用心すべきものもあるといったところなのではないかと思います。この「グーグル革命の衝撃」という本の場合は、幹部や開発者へのインタビューや開発風景の長期にわたる取材などでGoogleに協力を得たからということもあるのでしょうが、全般的にやや肯定的な受け止め方になっているようです。

まあこれまで何冊もの本で得た情報に対して付け加えるような新しい情報は特にはなかったのですが、同じ事実を伝えるにしても表現の違いで与えられる印象が違うというのは面白いものです。しかも、先日読んだ「プラネット・グーグル」は翻訳物とはいえ同じNHK出版から刊行されているのに、かなりトゲトゲした印象だったので180°違うというのが何とも言えません。書き手にとっても受け取り方の違いで表現が変わるということを表しているわけですが、ある意味バランスが取られているということになるのでしょうか。

まあそうはいってもこの本も手放しでGoogleを讃えているわけではなく、あらゆる情報がGoogleに管理されてしまうことに警戒感を表し、Googleに頼り切って自分で考えることができなくなり、自分で決めたつもりになっていてもそれがGoogleの検索結果の範囲内でしかないということに対し危惧しています。確かに、検索結果から自分の意志で取捨選択しているつもりでも、そもそも検索結果に出てこないものは選択肢とならないわけですから、「Google八分」というものがある通りGoogleの気に入らないものが除外されることにより情報操作されるという危険性は無視できません。結局そこはGoogleの社是 “Don’t be evil” をあてにするしかないのでしょうか。

これまでに読んだ本の中でも良かったのは、この本が日本人により書かれたものであるということで、やはり一般的に言えば翻訳物よりも初めから日本語で書かれたものの方が読みやすいのは間違いないでしょう。特に、わかりやすく伝えることを常に求められているであろうNHKの記者が書いているものなので、コンピュータやネットワークに対する知識が特にない人にも難しくなく、またビジネス書のような特有の堅苦しさもない、誰にでも読めるものになっているという意味で価値のある本かもしれません。刊行からまだ1年半ほどですから、この世界でもまだ陳腐化してもいないので、今一番お勧めできる「グーグル本」ではないでしょうか。