GoogleGoogleに光の部分と陰の部分は当然あるわけで。

ページランク」アルゴリズムによるサーチエンジンとしての圧倒的な高性能を武器に知名度を高め、その後も様々な先進的なサービスを続々提供して技術的な優位性をユーザに植え付けているGoogleですが、最近日本でも提供が開始されたGoogle Street View(GSV)は主にプライバシーの観点から議論となっているようです。先にサービスインしたアメリカでもちょっとした問題にはなっていたようですが、民家の敷地が広く、一般的に沿道と建物の間に広々とした空間があるアメリカとは違い、塀で囲って目隠しとすることでプライバシーを確保していた日本では、高い位置に設置されたカメラから塀越しに撮影されてしまってはいくら「沿道から見える景色を撮影しているだけだ」と言ってもなかなか受け入れられないのも仕方がないかと思います。

今回読んだ「プラネット・グーグル」という本では、これまでによくあったGoogle礼讃本とはちょっと違い、このGSVの例のようにともすれば技術本位で猛進してしまいがちなGoogleの負の側面も取り上げられています。

プラネット・グーグル
翻訳:吉田 晋治
日本放送出版協会 (2008/09)
ISBN/ASIN:4140813229

この本は表向きには特にGoogleを批判しているわけではなく、これまでにGoogleが辿った道とこれからGoogleが進もうとしている未来とを記しているものです。しかし、元々の著者の表現がそうなのか、あるいは翻訳時の問題なのかよくわからないのですが、ことごとく言い回しがGoogleに対する敵意に満ちているように感じるというか、Googleの過去の些細な失敗をあげつらっているように感じてしまいました。Googleを率いる2人が天才であったとしても、人間である以上失敗がないわけがありませんし、私企業である以上誤った判断を下してしまうことはあるはずです。こういったことはGoogleの栄光を讃える本ではあえてあまり語られなかったことであり、それを紹介するというのは悪くないと思うのですが、表現的に何となくトゲがあるのです。

ただそれを除けば、内容的にはGSVを含む最新のGoogleのサービスについても語られており、GoogleがいかにYahoo!Microsoft、そしてFacebookなどの競合企業と戦ってきたかといったことや、YouTubeに対してGoogle Videoが敵わないとなると戦いをやめて吸収を選んだ経緯などについて知るにはいいのではないかと思います。

「Googleによってこんなに便利になった!」と褒めちぎるだけだったり、あからさまな批判を繰り広げるだけでなく、内部事情についてしっかり調査されているようなので、なかなか説得力はあるような気がしました。おかしなことは言っていないだけに逆にその言い回しが読んでいる間じゅう気になって仕方なかったのですが、確かにGoogleも他の企業と同じように失敗を繰り返しながら大きくなっているのだということを改めて認識させてくれたかもしれません。