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名作コピーの時間

若い頃に読んでいたら違っていたかも知れません。

図書館へ行くと入口近くにある新刊コーナーをチェックするのが私の習慣なのですが、先日見つけたのが「名作コピーの時間」という本でした。これまで宣伝コピーというものにはそれほど関心があったわけではありませんが、パラパラとめくってみると軽く読めそうだったのでとりあえず借りてみたところ、思いがけず面白かったのでご紹介したいと思います。

名作コピーの時間

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この本は宣伝会議が発行する月刊誌「ブレーン」の同名の連載をまとめたもので、プロのコピーライターが自分にとっての名作コピーを3本ずつ選んで、それにまつわる自分の経験などを語っているリレーコラムになっています。やはり名作とされているものなので、取り上げられているのは私でさえ知っている、聞いたことがあるというものが大多数となっています。それらが登場した当時のことを思い出して、私自身が懐かしく感じるところもありますが、同業のコピーライターとしてそれぞれの著者が感じた思いというのがまた興味深いものです。

さすがに言葉で表現することを生業にしている人たちなので、基本的に文章がとてもうまいです。3ページ程度の短い文章の中で言いたいことがちゃんと伝わってくるので、文章を書く上でも勉強になるのではないかと思います。もっとも、コピーというのはもっと短い言葉に凝縮しなければいけないわけですから、この人達にとっては大したことではないのかもしれません。

ただ、電通と博報堂という広告大手一流企業の現役や出身者が多いためか、プライドの高さが鼻につくような人もいるのがちょっと残念でした。業界の仲間内で読まれる文には業界内のヒエラルキーで済んでしまうのかも知れませんが、全くの部外者にはあまり良い感じのものではありませんね。もちろんそういう人ばかりではないのですが。また、広告業界の専門用語、特に「クリエイティブ」という言葉が一般的な使われ方とは違うようなので、これにも慣れが必要でした。

インターネットでは嫌われがちな広告ですが、そこに命をかけているクリエイターもいるので、たまには目を向けてみるといいかもしれません。この本はなかなか面白かったので次男にも勧めて読ませてみましたが、高校生の彼にも面白さを感じてもらうことができたようです。

なにを買ったの? 文房具。

さすがにここまではついて行けません。

私は子供の頃から文房具が好きで、用があるわけでもないのに伊東屋や東急ハンズの文具売り場で文房具を眺めては悦に入ったりしていたものですが、今月近所に新しい文具店が開店するということなのでそれを楽しみに待っていたりもします。いったい文房具のどこがなぜ好きなのかと聞かれても明確に答えることはできないのですが、まあ好きなものは好き、理屈ではありません。何か琴線に触れるものがあるのでしょう。しかし私の場合、文房具はあくまで使うことを前提に購入し、使って楽しむものであるわけですが、そうでない人もいるようです。

作家の片岡義男氏といえば「スローなブギにしてくれ」を代表作とし、数多くの作品を世に送り出している大作家であるわけですが、この人は私の想像を超える文房具マニアであるようです。この片岡氏が自信の文房具への愛を込めて書いたと思われる「なにを買ったの? 文房具。」という本はパッと見以上に凄い本なのではないかと思います。

なにを買ったの? 文房具。
著:片岡 義男東京書籍 (2009/03/25)ISBN/ASIN:4487803381
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装幀はいたって地味なもので、書店や図書館で棚に並んでいても手に取ってみることまではなかなかしないような気がするのですが、今回はたまたま図書館の新刊コーナーにあったのが目に止まり何気なくページをめくってみて、只者ではない何かを感じて借りてみることにしたのでした。実は片岡氏の作品はこれまで読んだことがありませんでしたが、私も名前だけは知っていたので「なぜこんな有名作家が文房具の本を?」というのが引っ掛かったのです。

総ページ数は140ページ程度ですが、厚手のコート紙が使用された全ページフルカラーで、半分ほどのページに写真が掲載されています。これだけふんだんに写真を使って文房具を語ること自体普通ではありませんが、これらの写真も片岡氏自身がリバーサルフィルムを使用して3ヶ月もの時間を掛けて撮影したものだそうです。光源に真昼の自然光を使用しているので、陰影の深い暖かみのある色合いの写真になっています。最近見慣れたコントラストの高いデジタル写真とは明らかに異なる懐かしさを感じる絵が、本文の古風なフォントとマッチして今年発行されたばかりとは思えない風格を与えているようです。しかしその被写体はあくまで文房具です。いくつかの色鉛筆、ペン、消しゴム、ノート、そして封筒や糊などをそれぞれならべただけのような写真を、それらを商品として売るためでもないのに撮る人がどれだけいるでしょうか。しかしその配色や配置といった構図の取り方に、被写体に対するただならぬ愛情を感じてしまいました。

文章の方は最初から最後まで、小見出しがあるだけで章立てされることもなくただ徒然と、愛する文房具の数々について綴ったものになっています。よくもまあ文房具だけでこれだけ語れるものだと感心してしまったりもしますが、そこはさすがにプロの随筆家ですから読んでいて退屈することもなく、片岡氏の話を聞きながら一緒に文房具店を巡っているような気分になることができます。まあそれも文房具好きでなければどうだかわかりません。

紹介されている文房具の中には私も先日購入したVaimo11 FLATなどもあったりしますが、その他に「これは欲しい!」というようなものもいくつかあって、共感できるところがあるのは嬉しく感じました。3L Griffitの三角定規などは非常に魅力的です。しかし、私もさすがに10年分以上ものストックを抱えるほどノートを買うことはしませんし、買ったとしても置いておく場所がありません。私の場合は欲しいと思っても使わないかなと思えば諦めますが、そこを踏み越えてしまうと歯止めが効かずに片岡氏のようなことになってしまうのでしょうか。ここまで極めればそれで本を書いてということにもなるのかもしれませんが…

親子で映画日和 – 子どもと映画を楽しむために

いい映画、観てますか?

Thomas Edisonが映写機を発明してから100年あまり、世界中では数え切れないほどの映画が生み出され、ある作品は多くの人に感動を与え、またある作品は誰にも見向きもされずに消えていったことかと思いますが、そんな世間での評価とはまた別に、観た人それぞれにその作品にまつわる思い出や考えたことなどがあることでしょう。あまたいる評論家のように、各作品の内容について批評するのではなく、そんな映画にまつわるエピソードなどを綴る「映画エッセイスト」を自称する永千絵氏の「親子で映画日和 – 子どもと映画を楽しむために」という本を読んでみたのですが、これは映画好きには非常に共感でき、また著者がどれだけ映画を愛しているかが伝わってくる、楽しい著作でした。

親子で映画日和ー子どもと映画を楽しむために (SCREEN新書)
著:永 千絵近代映画社 (2008/12/10)ISBN/ASIN:4764822199
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著者は永六輔氏の長女らしいのですが、その父よりも母と妹と映画を観に行くことの多かった著者が、娘として、また自分自身も二児の母として、親子にとっての映画との関わり方をテーマに16のエピソードを綴っています。それぞれのエピソードではいくつもの映画に触れられていますが、それぞれの作品についてはあまり深く掘り下げることはなく軽く触れられているだけなので、その映画を観た人にとっては「うんうん」と頷けるものであっても、まだ観ていない人には「ふーん」という程度のものです。

しかし、これだけ沢山の映画を観てきた人が取り上げるだけの作品ということで、その作品に関する興味は俄然湧いてきます。紹介されているのは「西部戦線異状なし」から「ウォンテッド」まで時代もジャンルも実に幅広く、この全てを制覇している人こそ本当の映画好きと言えるのかもしれません。残念ながらこれらの映画のうちで私がすでに観たというのは半数にも満たないので、TSUTAYAに行って「次は何を観ようかな~」と思った時に観られるようにチェックしておきたいと思います。ただ、名作と言われる映画であっても、TSUTAYAには必ずしも置かれていないのが問題ではあります。

一応私も映画を観る度にこんなところで拙い感想文を書いているわけですが、やはり映画を観るとそれぞれに何らか考えることはあり、それはその日映画を観る前の出来事と関連していたり、映画の内容そのものと実体験がリンクしていたりと様々です。それは全くの私事だったりもするので必ずしも公開できるものではなかったりもしますが、単に「あ~面白かった」だけではないのが普通ですね。この本を読んで、これからはそんな「考えたこと」についてもできる限り残していきたいという気になりました。

ちなみに私自身が映画好きであるのも両親の影響があるのかもしれませんが、私の息子たちも頻繁に自宅でDVDを観ています。今のところポケモンなどのアニメを観ていることが多いようですが、SFもよく観るのはまさしく私の影響でしょう。ただ、私が面白かったと思う作品であっても、ちょっとでもセクシーなシーンがあったりすると小学生にはまだ見せられませんから、早く大きくなって一緒に楽しめるようになって欲しい、なんてことも思いますね。そのあたりは著者も言っていて、

どんな映画を観るにしても、高校生くらいまでは親が一応の判断を示してやるべきではないかと思う。一緒に観られるか、別々にでも同じものが観られれば、それが一番良いのだろうけれど、これはまだ早すぎたのかな、ちょっと問題ありだな、と思ったときに、あとからでもうまくフォローしてやれる親になれたら、と思う。

というのも共感できるところです。