タマキングタマキングはじめの一歩。

私は結構のめり込みやすい質なのか、何かが気に入るとついついとことんまで追究してしまいそうになるようなところがあって、食事の時もおかずはまんべんなく食べなさいと親に何度も言われたものですが、それができず順番に片付けていってしまうのはやはり性格だったのでしょう。今でもそれは直っておらず、その調子で最近はまっている宮田珠己氏の著作もほとんど読破してしまうことになりましたが、今回は宮田氏の処女作である「旅の理不尽 “アジア悶絶編”」を読みました。

旅の理不尽―アジア悶絶編 (小学館文庫)
著:宮田 珠己
小学館 (1998/02)
ISBN/ASIN:4094110410

私が読んだのはこちらの小学館文庫の方ではなく、自費出版されたハードカバーの方なのですが、文庫版では書き下ろしが2編追加されているということなのでこちらの方がお得でしょう。当時まだサラリーマンだった宮田氏が会社を休んでは旅行に出掛けた際の体験を綴ったものですが、いつものふざけた文体もここから始まっているようです。

“アジア悶絶編”とありますが、実際には続編は未だ出版される気配もないようです。東は中国から西はイスラエルやトルコまで、そして八ヶ岳での雪山登山についても記されていて、各地での些細な体験を必要以上に膨らませて面白体験にしてしまっているのは宮田氏ならではといったところでしょう。

しかし、この作品を読んで一つ明らかになったことがあります。この本の最初の章は「そんなんじゃだめだ熊男」というタイトルで、イスタンブールで熊を連れて写真を撮らせ、その後撮影料をふんだくる男の話です。この「熊男」というのは先日読んだ「深夜特急」にも登場していて、著者の沢木氏はつい写真を撮ってしまったものの何とか逃げ延び、その後再会しないよう戦々恐々としていたということでした。その「熊男」が沢木氏の時から20年近く経過しているというのに、相も変わらず同じことをしているということです。本人にしてみればうまい商売を思いついたものですが、宮田氏が難を逃れたのはやはり「深夜特急」を読んでいたからなのでしょうか。それならそうと書くべきかなとも思いますが…

沢木氏と同じようなところへ訪れていながら宮田氏の方がはるかにお気楽な旅のようですが、それでも騙されて痛い目に遭っていたり、ほろ苦い恋物語もあったりして、なかなか誰もが経験できることばかりではありません。そういった「非日常」こそが旅の醍醐味でもあるわけですから、それを疑似体験できるという意味ではこれ以上楽しめる旅行記があるだろうかというものではないでしょうか。