独房味わってみたいものではありませんが。

法治国家において犯罪を犯してしまった人が法の下にその罪を償うための施設が刑務所ですが、収容され自由を制限されること自体が罰であるのですから、必然的にそこで提供される食事についてもそんなに恵まれたものであるわけがありません。しかし、そうは言っても実際にどんな食事が出てくるのかということについては刑罰を受けた人でなければ知らないものですし、そういう人は自分から喋りたがるようなことでもないので、なかなか一般の人が知る機会というのはないものです。そんな知る人ぞ知る(?)刑務所の食事を紹介する「ムショメシ」という本を見つけて読んでみました。

ムショメシ
著:川保 天骨 , 他
三才ブックス (2008/12/10)
ISBN/ASIN:4861991587

この本では刑務所のある日の朝昼晩の3食を「何々刑務所何年何月何日の」と写真付きで細かく紹介しているものです。掲載されている写真はそれっぽい容器に盛りつけられた実にリアルなものなのですが、これはあくまで「法務省が開示した資料をもとに実際に調理して写真に収めた」というもので、要するにテレビなどでありがちな「再現」とそれほどレベルの違うものではありません。ただ、それでもメニュー自体は本物ですし、質や量については経験者にある程度確認しているものではないかと思われますので、何も知らない人が雰囲気を掴むためにはわかりやすいと言うことでいいのではないかと思います。

また、紹介されているおよそ100食分のメニューの他に、マンガ「刑務所の中」の作者花輪和一氏が実際に銃刀法違反などで服役した際の経験談がコラムとして載せられていて、これもまたなかなか知り得ない世界が語られていて面白いものです。

この花輪氏の言っていることですが、刑務所の食事自体はしっかり栄養が計算されていて、また厳しい制約の中でなんとか受刑者の生活に変化を付けようとデザートが提供されたりしていることもあって、案外慣れてしまうものだそうですが、なぜかとにかく服役中は甘い物が欲しくなるのだそうです。それで出所してすぐに甘い菓子パンを3個も買ったのだそうですが、これからはいくらでも食べられると思うと今度は1個も食べきることができなかったと。やっぱり何事もバランスが大事と言うことなのか、あるいは制限されるからこそ欲するようになるものなのか、不思議なものです。

まあ私自身は一生の間に一度でも体験したいものではありませんが、一時の過ちや過失でこういう生活を余儀なくされている人がいるということも知っておいて損はないかもしれません。「臭い飯」と言われるほど酷いものではないようですが、やはり決して進んで食べたいと思うようなものでないことはわかりました。