精神的に疲弊しました。
ミシガンを含むアメリカ北部の冬の寒さは非常に厳しく、最高気温が0℃を超えない日が長く続くので数多くいる野生動物も冬眠したり巣篭もりしたりであまり姿を現さなくなります。それが3月頃になって積もっていた雪も解け春の兆しが見えてくると、動物たちの動きも活発になってきますが、悲しいかなここは自動車社会、道路脇に横たわる亡骸もそれに比例して増えてきてしまいます。ミシガンでよく目にするのはアライグマ、スカンク、リス、ウッドチャック…そしてシカです。
今まで私はなんとか動物との接触は避けてきていたのですが、実は一月ほど前にシカをはねてしまいました。正午前後に自宅近くの田舎道を走っていたところ、前方にシカの8頭程度の大きな群れが道路を横断しているのが見えたので減速したのですが、私が走っているのとは反対の左側に渡りきったので安心して再加速したところ、血迷った2頭が走って戻って来るではないですか。慌てて急ブレーキを踏んだもののあと2-3mというところでぎりぎり間に合わず、1頭の横腹に正面から当たってしまったのです。
シカの方は外傷はなかったものの骨折してしまったでしょうから上手く歩くことができないようでしたが、幸い同乗していた妻と私には怪我はなく、車の方もフロントグリルは割れてしまいましたが走行には支障がなかったので、そのまま目的地に向かってしまうことにしました。その後しばらくはいっそのことそのまま乗っていてもいいかという位のつもりでいたのですが、よくよく見るとヘッドライトの向きも歪んでしまっていたり、ラジエターやエアコンのコンデンサーも曲がってしまっていて、修理するとなると$2000以上はかかってしまいそうだったので保険を使って修理することにしました。
そのためにはまず警察への届け出が必要です。これは他者や標識等に被害を与えていたり、損傷が大きくなければ後日でも構わないのですが、まずどこの管轄なのかがわかりづらく、私は3箇所も回ってしまいました。最初は市の警察署に行ったところそこは市の外だから郡の保安官事務所に行けと言われ、教えられて行った保安官事務所ではそこは隣の郡だと言われてちょっと離れたところまで行かなければならなかったのです。まあ最終的には特に問題なく届け出ることができたので良いのですが、これで半日かかってしまいました。
次に必要なのは保険会社への届け出です。これはウェブサイトで簡単にできて、追って割り当てられた担当者と電話やメールでやり取りをして進めていくことになります。この時、英語に不安があれば通訳を挟んでもらうこともできます。私は聞き漏らしたくないのでメールにしてくれと伝えたところ、電話を通訳に繋がれてしまい、せっかく通訳してもらっているのだから何か聞いてあげようと必要もない質問をするという、余計な気をつかう羽目になってしまったのですが。
実際の車の修理は、アメリカではディーラーではなくボディショップという修理専門の業者に依頼するのが一般的、ということで調べてみたところ、Honda Collision Centerという事故時の情報をサイトがあって、ここでボディショップを紹介してくれることがわかました。ここで自宅近くの業者を見付けたので、ウェブサイトで見積もりの予約を取り、指定した時間に行ってみると15分ほどで見積もりと写真撮影を済ませてくれました。
見積もりは保険会社に送ってもらい、承認されたらまた修理の予約を取って持って行きます。修理の間に代車を貸すというサービスはないのですが、車がないことには生活もままならないのでレンタカーを利用することになります。このレンタカーの代金も、一日$30までという制限はあるものの保険でカバーされるので遠慮無く利用することにしましたが、$30を目一杯使うと日産Altimaを借りることができました。SUVに比べるとセダンはずいぶん安く感じますが、それはレンタカーにかぎらず新車でもSUVは割高ですね。久しぶりにセダンに乗ってみると思いの外快適で、次はセダンにしようかなと思って妻に話してみると、それだけオジサンになったということねなどと言われてしまいましたが。
修理は4日で終わるということだったのですが、2日目にボディショップから電話があって、見積り以上に修理が必要なことがわかって保険会社に申請中、その後4日目に連絡してみるとまだ保険会社が来ていないのでいつ終わるかわからない、と。結局翌週になって「申請が通って部品を発注した。上手く行けば今週中に終わるが一応完了予定は来週の火曜日。」と連絡がありましたが、最終的には前倒しされて木曜日に完了の連絡があり、レンタカーを返却して引き取りに行ってようやくすべてが終わりました。
金銭的な負担は保険の免責$500とレンタカーの税金分$30くらいで済んだのですが、時間的なロスと精神的な負担があって、話のネタにはなるものの決して良い経験とは言えません。衝突してしまった時にはそれから起こるであろうことの面倒くささを予想して目の前が暗くなったのですが、結局それはまさに的中してしまったというわけです。何事もスムーズに進んでいればこれほど疲れることもないのでしょうが、いちいち面倒が起こるので大変でした。まあ私がもう少し慎重に運転していれば避けられたことなので自業自得かもしれませんが…