石見銀山 龍源寺間歩世界遺産としてはまだまだこれから…

激しい雨風の中水木しげるロードを堪能した翌日は、当初は日本海で海水浴を楽しむつもりだったのですが、朝方は空がやや曇っているようだったので「代わりに明日プールへ連れて行くから」と子供を説得し、つい先頃UNESCO世界遺産への登録が決定し話題になった島根県西部の石見銀山に行くことに予定を変更しました。泊まっていたのは大山のペンションだったので120kmほど離れていて、ついでに寄るようなところではないような気もしたのですが、最近あちらこちらで目にしていたので一度は行ってみたいと思っていたのでした。

山陰地方は高速道路もろくに整備されておらずアクセスが非常に悪く、これでは過疎化も進むばかりなのも仕方がないと思えてしまうのですが、米子から西へ伸びる山陰自動車道が出雲の手前で終わってしまったあとは一般国道を進んで行くしかありません。その後大田から標識の案内に従って山の方へ入っていくと程なく石見銀山にたどり着きます。世界遺産のための整備の一環か無料の駐車場が山中に整備されつつあり、そこに車を停めてバスに乗って銀山遺跡や町並みの方へ行くことになります。

このバスは1回200円、一日券が500円ということになっているのですが、坑道跡へはバスを乗り継ぐ必要があるので普通は一日券を買うことになるでしょう。私たちも一日券を買ったのですが、ただバスに乗っていくだけではあっけなくて面白くないだろうと、バスを乗り継がずに乗り換え地点(大森)から龍源寺間歩という坑道跡までの2.4kmほどの距離は歩いて上ることにしました。結局この日は日差しが強くなり、上り坂を汗だくになって歩いたのですが、5歳の次男でも歩ききったので大したことはないでしょう。道中には特にこれといったものがあるわけでもありませんでしたが、緑の中を歩くのは気持ちがいいものです。ただ細い道路をバスが行き来するのでたびたび道路脇によける必要があるのがちょっと問題です。

龍源寺間歩では唯一公開されている坑道に入ることができます。入り口に近付くとひやりと冷たい空気が流れ出てきて、ここまで歩いてきたからこそ味わえる気持ちの良さで疲れも吹き飛びます。中に入っていくと私でさえも身をかがめないと頭をぶつけるほどの狭い坑内に、当時の作業車の劣悪な環境が垣間見えるのですが、展示らしいものはあまり充実しておらず、最低限のパネルなどがある程度でした。気持ちがいいのでしばらく涼んでいたいとも思ったのですが、何しろ通路が狭く途中で立ち止まっていると後続の邪魔になってしまうのであまりのんびりできません。仕方なくずんずん進んでいくと、若干気温が上がり出口が近いことに気付くのですが、あまりに早すぎます。実は公開されているのはわずか273mしかないのでした。そこからは新しく付けられた坑道で直線的に出ていくことになり、あっという間に終わってしまい子供もかなりガッカリです。私たちがわざわざ歩いて登ってきたからこそそう感じるのか、あるいはバスやタクシーで登ってきてしまった人はもっとあっけなくて「何これ?」という感じなのか、比べようもないのでわかりませんが…

まあそういっていても仕方がないので、お昼も過ぎたしということで下りのバスに乗る前に龍源寺間歩からすぐのところにあるTorayaというカレー屋さんに入りました。こんな場所にあるというのも凄い話なのですが、このお店のカレーが実はなかなか美味しいのでした。チキン、フルーツベジタブル、タイ風という3種類のカレーがあるのでそれぞれ1皿ずつ頼んで食べてみたのですが、チキンとフルーツベジタブルはたくさんの野菜が溶け込んで、さらっとしていて甘みのあるカレーです。タイ風は辛いので子供には無理でしたが、本格的なグリーンカレーです。まさかこんな観光地のまっただ中で、リーズナブルな値段でこんなに美味しいカレーが味わえるとは思っていなかっただけに、喜びもひとしおといったところでしょうか。

カレーを食べて満足したあとは満員のバスに乗って再び大森に戻り、妻の目当てだった群現堂というお店に向かいます。こんなお店がなぜこんなところにあるのかというのも私にはよくわからないのですが、雑誌などでは何度も取り上げられていて有名なようですね。わざわざこのために岩見までやって来るという人がどれだけいるのかわかりませんが、少なくとも妻はその一人のようなのでそれなりにいるのかも知れません。結局妻も大したものは買わなかったようですが…

その後はまたぶらぶらと歩いてバス乗り場まで向かうのですが、町並みというのもそれほどのものでもありませんし、遺跡として残っているものも自然すぎるのかどうということもなく、一体どういうところが世界遺産なのかと疑問を感じずにはいられませんでした。坑道跡も生野銀山の方がはるかに立派ですし、私の中ではがっかり名所入りしてしまいました。一応、「山を崩したり森林を伐採したりせず、狭い坑道を掘り進んで採掘するという、環境に配慮した生産方式」というのが売りのようなので、そういわれてみれば確かに…という感じではあるのですが、ちょっと弱いですね。

結局、このあと広島の方へ抜けて山陽自動車道で買えることにしたのですが、せっかく広島を通るならということで見に行った原爆ドーム市電の方が、一度も車も停めずに窓から観ただけなのに子供の受けが良かったというのも何だかなあという感じです…