現代用語の基礎知識遅かれ早かれこうなることはわかっていたはず

毎年11月頃になると書店にうずたかく積み上げられ、暮れの訪れを告げる風物詩のように分厚い事典・用語辞典・年鑑の性格を併せ持った本が売られていましたが、その御三家のうち後から参入した2つ、集英社の「イミダス」と朝日新聞社の「知恵蔵」が昨年発売された2007年版を持って休刊となることがわかりました。この2社は紙媒体での出版からは撤退するものの、今後は有料のウェブ版を充実させていくとのことです。これで残ったのは自由国民社が1948年から出版を続けている「現代用語の基礎知識」のみとなり、老舗の出版するオリジナルがおよそ20年ぶりに競合のないユニークな存在に戻ることになりました。

これら3誌いずれも2007年版では創刊時の10分の1ほどの発行部数に落ち込んでしまっており、休刊する2社はこれをその理由にしているわけですが、「現代用語の基礎知識」は他2誌に比べてわずかながら少ない12万分という発行部数にも関わらず、「そんなに発行しているのになぜ休刊しなければならないのか」と休刊など考えたこともないというスタンスらしく、実に堅実な誌面作りをしているようです。

ただ、やはり部数が激減しているのは事実であり、その原因は何といってもPCとインターネットの普及により紙媒体でのデータベースの利便性が相対的に低くなっていることでしょう。正確さや公正さには若干の不安はあるものの、事典や用語事典としては無償で利用できるWikipediaという非常に便利なものがありますし、検索性などを考えてもPCでの検索に敵うはずもありません。またあれだけ分厚い各誌は置いておくにも場所を取りますし、2500円ほどするので一部が改訂されるだけのものに対し毎年投資するだけの価値があるかどうかも疑問を感じてしまいます。

しかしながら、情報の信頼性という面において、出版社がその名において責任を持って編集している記事にはネット上に散らばる情報も敵うものではありません。ただそれが紙媒体である必要があるのか、というところが問題なので、休刊の決断を下した2社はウェブでのデータベース提供に軸足を転じることにしたのでしょう。この点、出版社としての規模から自由国民社が他社と同じような対応を取るのは逆に難しいということもあるのかも知れません。

まあそうは言っても「現代用語の基礎知識」は今年創刊60周年を迎えるということで、これだけ続けてくると重みというか風格のようなものも出てくるものですね。毎年発表される新語・流行語大賞などをみていると何だか無理やりなものを感じることもありますが、その流行語も何十年も積み重ねるとそれだけで世相を綴り、歴史を語れるものになってしまうものです。この本もいつまでも続くものではないかも知れませんが、とりあえず100周年を迎えるときに私がもし元気で生きていれば、記念に購入することにしたいと思います。