三洋電機後に残るものは何でしょうか?

日本経済新聞等に「京セラ、三洋の携帯電話事業買収へ・国内勢同士で初の統合」という記事が掲載されたのはちょうど1ヶ月ほど前のことですが、当の三洋電機からはこの直後「売却するのは携帯電話の販売子会社であって端末事業の売却について『決まった事実はない』」というリリースが出され、「またお得意の飛ばし記事か」とも思いましたが、「決まっていない」と発表されるときは大抵確定していないだけで交渉は大詰めという場合が多いのではないでしょうか。まあこんなことは後からだから偉そうに言えるのかもしれませんが、案の定「京セラ株式会社との携帯電話事業譲渡に関する基本合意のお知らせ」というリリースが10月11日付で出され、携帯電話事業、PHS端末事業、PHS基地局事業及び無線通信システム事業の京セラへの譲渡が正式発表されました(京セラ側リリース)。

もともと携帯電話事業は三洋電機の中でも「コア事業の一つと位置づけ」られていたものなのですが、同社の経営環境を考えるとさらなる事業のスリム化と「選択と集中」を推し進めることが求められることとなったようです。三洋電機にはなかなかユニークな製品が多く、特定の分野では非常に強みを持っていたりするようなのですが、いかんせん主流となる事業では今一つパッとしないため総合電機メーカーとしてはどうしても無理しているように見えることがありました。しかし、確かな技術力と自由な発想を持った会社は得意分野に集中すればかなりの力を発揮できることは間違いないと思います。

SANYOブランドの携帯電話というと最近はau向けに専念しているような感じですが、つい最近CEATEC Japanで展示され話題になったau design projectINFOBAR 2もその一つです。しかし、このINFOBAR 2の他、初代INFOBARや私も以前使用していたtalby、そして最新機種でいえばW53SAなどは同じSANYOブランドではあっても「鳥取三洋電機株式会社」という別会社によるものであり、この鳥取三洋は今回の譲渡範囲には含まれていないのです。talbyは美術的なデザインだけではなく、機能的なデザインも優れていて非常に使いやすい端末だったので、この血が失われずに済むということにはホッとしています。

こうして鳥取三洋だけで継続できるということはこれまでも三洋電機本体の携帯電話事業との独立性がかなり高かったということになりますが、それではかなり無駄があったのではないでしょうか。納入先が異なっていて仕様的に共通化が難しいというのであればまだわかりますが、どちらも同じようにau向けをメインにしていたというのであれば何か歴史的な経緯があるにせよ、並列に存在する合理的な理由があるとは思えません。事業の一本化はむしろ遅すぎたくらいではないでしょうか。

ちなみに三洋は「好調なポータブルナビゲーションシステムなどに集中する」というような報道もあったように思いますが、実はこのポータブルナビゲーションシステムゴリラというのも鳥取三洋の製品のようです。ということは三洋電機社内でもかなり重要な位置にある子会社ということになりそうですが、主に消費者向けの情報機器を扱っているようです。しかし改めて三洋電機の商品/サービス一覧というのを見てみると本当に色々なことをしているのですよね…当事者にしてみれば何としてでも継続していきたいものばかりなのでしょうが、厳しい経営状況が続いている以上、どれもこれもというのは難しいのではないでしょうか。不躾に言えば「器」とか「身の丈」とかいうようなものでしょうかね…

いや、なんだかんだ言って三洋製品は結構買っているので、頑張って欲しいんですよ。