Earth人間は地球を支配した気になっていますが…

先日、実家の母から珍しくメールが来たのですが、曰く

お父さんと「アース」を見てきました。テレビで撮影の舞台裏を見て、ぜひ大きなスクリーンで見たいと行ってきましたがすごーく良かったです。自然の素晴らしさ、脅威、残酷さなど、そして私たち人間の神に任された責任などを感じさせられました。

とのことで、我が子らにも観せてあげなさいということでした。まあ次男にはまだ難しいだろうなとは思いつつも長男の方はそれなりに関心を持ってくれそうだと思い、近いうちに連れて行こうと考えていたところ、昨日はちょうど映画の日でかつ金曜日ということだったので、会社帰りに合流して家族で観に行ってみることにしました。

「子供に観せるべき」という考えからかこの映画は中学生以下は500円という特別価格になっており、大人も映画の日で1000円で観ることができたので、4人で3000円というのはちょっと得をしたような気になってしまいましたが、それでも欧米の水準からすればまだまだ高額ですね。大手シネコンなどではしがらみの中で様々な割引を打ち出すなど努力しているようですが、今の価格設定では「映画は特に好きな人だけが映画館で観るもの」という状態から変わることはないでしょう。

それはさておき、この「アース」という映画はいくつもの価値あるドキュメンタリー作品を手掛けているBBCの製作によるもので、大自然に生きる動物たちの生活の現状を素晴らしい映像で見せてくれます。北極ホッキョクグマの親子から始まり、ツンドラタイガヒマラヤジャングル砂漠南極と北から南へ辿りながら、厳しい自然と闘い逞しく生活する動物たちが地球温暖化の影響による環境の変化に揉まれながらも生き抜いていく様子、時には戦いに敗れ倒れていく様子を脅威の映像で綴っています。

やはり一番の魅力は「一体どうやって撮ったのだろう?」と思わせる貴重な映像ですが、あるシーンは動物に密かに大接近して撮り、またあるシーンは超望遠レンズで離れたところから狙い、あの手この手でありのままの動物の暮しぶりを捉えたもののようです。特に美しいのはクジラを始めとする海洋生物を描く映像で、その他の場面も含め、さすがBBCが5年半もの歳月を掛けて撮影しただけのことはあります。

特に印象的なのは温暖化による棚氷の融解が進んでいることの影響を受け、猟期を失って飢えに苦しみながら最後の戦いに挑むホッキョクグマでしょう。おそらく作り手側も大いに意識しているものと思われますが、この作品の主なメッセージである「地球温暖化への対策に取り組もう」ということを非常に強く訴えかける印象深いシーンです。このシーンのために全編1時間半ほどに渡る流れがあるといっても過言ではないかもしれません。

この作品に登場するのは野生の生物だけで、人間は一切現れません。唯一ナレーションが流れるのみですが、日本語版はすでにハリウッドスターの一員となっている渡辺謙で、神秘的な映像と非常によく合った落ち着いた語りでした。一方、英語版ではJean-Luc PicardことPatrick Stewartが担当しているのですが、こちらもStartrekのナレーションを彷彿とさせる重厚なものになっているのではないでしょうか。

ただ、淡々と綴る形になっていてメリハリに欠けるようなところがあり、何となくダラダラしてしまっているような感じは否めません。もちろん過剰な演出がなく落ち着いた作品になっているのはいいところなのでしょうが、子供にはやはり飽きがきてしまうようでした。また映画の日だったので普段以上に混み合っていたのだと思いますが、上映1時間半前にチケットを取ったときには既に多くの席が埋まっていて、左右の端のほかは前から4列目より前しか空いていなかったので、見上げるような形で観ることになってしまったのが少々残念でした。スクリーンが近いので迫力はかなりのものでしたが、一目で全体を見渡せないというのはやはり辛いものがあります。中学生以下500円という特別料金がe席リザーブでは適用できないというのが痛いです…