SunshineSFとしては筋の通らないところが多いのですが…

近頃洋画というと莫大な資金力にものを言わせたハリウッド超大作ばかりが話題になっていて、その他の作品は本当に映画の好きな人だけが観るものという感じですが、正直なところ私もあまり存在を把握していなかったイギリス映画「サンシャイン2057」というSF作品をTSUTAYAで見つけてなかなか面白そうな感じだったので借りて観てみました。まあ、イギリス映画とはいっても配給は20世紀フォックスなのでハリウッドマネーが入っていないわけではないのでしょうが、作品の作りの違いはかなり明確なのではないかと思います。

サンシャイン2057
監督:ダニー・ボイル
20世紀フォックスホームエンターテイメントジャパン (2007/09/07)
ISBN/ASIN:B000OPVT6A

今からわずか50年後の近未来、太陽の輝きが弱まってしまい氷に覆われた世界になってしまった地球から、太陽に巨大な核爆弾をぶつけて活動を強めるため太陽に向けて出発した宇宙船「イカロス2」を舞台にしたSF作品です。猛烈な太陽の熱から船体を守るためのシールドなどが重要な要素となっており、設定としては面白いものがあると思いますが、全体的に「2001年宇宙の旅」の影響をかなり強く受けている、というよりオマージュ的なものも大きいのか、よく似ているところがあります。とはいえ、前半は純粋なSF的作品であるのに、後半以降はサスペンス的要素が強くなり、終盤などは私にとってはホラーです。

2001年の頃と大きく違うのはやはり何といっても進歩したCG技術が導入されていることで、宇宙空間や船体の描写などは映像的にはかなりリアリティのあるものになっています。しかし、単に説明不足なだけなのかもしれないのですが、なぜか船内にはエアロックを出てしまうまでは重力があることや、そもそもシールドが強烈な太陽の熱を遮っていることなど不可解なことが多々あります。まあ楽天的なハリウッド作品ならそういう細かいことは抜きにして楽しめばいいのかもしれませんが、重厚な雰囲気を持たせようとしているこの作品の場合にはどうしても引っ掛かってしまうところです。

また、映像的な特徴として、いわゆるサブリミナル効果のようなものが使用されていることが上げられます。その狙いはあまり定かではなくあまり評判のいいものではないようですが、私にはかなり薄気味悪く感じらたので、それを狙っているのであれば成功なのかもしれません。Wikipediaには

映画やテレビ放送などでは、使用を禁止されている。

と書かれていますが、この場合はイギリス作品なので適用外なのか、厳密にはサブリミナル効果ではないのか、あるいはWikipediaが間違っているのか、私にはよくわかりません。

キャストの方は、日本人にとってはやはり真田広之がカネダ船長役で出演しているのが話題になるところでしょう。実は船長といってもそんなに中心的な役ではないのですが、ほとんど8人の乗組員だけで描かれているのでもちろん目立たないわけではありません。しかし、海外のポスターでは端に描かれている真田広之が日本版では真ん中で先頭に立っているというのはどうなのでしょうか。その他のキャストも皆それぞれ重みのある演技をしているのに、こういう売り方はどうかと思います。
ポスター比較

また、8人のメインキャストのうち3人がアジア系というのも特徴的ですが、観ている間は全く意識しませんでしたが黒人が一人も登場しないというのもイギリス作品だからなのか、現代のハリウッド作品では考えられないことのような気がします。これを観て「人種差別だ」という人はいないだろうと思うのですが、そう言われるのを恐れてハリウッドだと黒人を主役に据えてしまったりするのでしょうね…そうだったとしてもどうということはありませんが。