映画とはまた一味違います。

今年も毎月1本を目標に映画館へ足を運んでいる私ですが、先日のポニョもありましたし、この夏はこれまでになくハイペースで観に行っているので、どの作品をいつ観たのかということがわからなくなりつつあります。まあ代わりに自宅でDVDを観る機会が減っているので、合計するとそう変わらないはずなのですが。

ということでこのブログを振り返るとどの映画をいつ観たか、何をいつ買ったかなどがわかるというのも実は便利だったりするのですが、どうやら昨年末の作品だったらしい「アイ・アム・レジェンド」の原作となった作品を図書館で取り寄せて読んでみました。

アイ・アム・レジェンド (ハヤカワ文庫 NV マ 6-5)
翻訳:尾之上浩司
早川書房 (2007/11/08)
ISBN/ASIN:4150411557

これまでに1964年の「地球最後の男」、1971年の「地球最後の男 オメガマン」、そして2007年の「アイ・アム・レジェンド」と3度も映画かされているということはそれだけ原作が優れたものだからだろうということで楽しみにしていたのですが、これがなかなかハードなホラーSFで、ホラーの苦手な私にはちょっと厳しいものがありました。あまり忠実ではない映画版の場面が中途半端に原作を思い出させ、その足りない部分をこの作品に大きな影響を受けているRomero監督の「ランド・オブ・ザ・デッド」が補完してしまうので頭の中ではかなり鮮やかなイメージが浮かんでしまうのが辛いのでした。

また、公開されるたびにタイトルの変わった映画同様、原作の邦訳タイトルもこれまでに何度も変遷してきました。最初は1958年に「吸血鬼」、1971年に「地球最後の男/人類SOS」、1977年に「地球最後の男」ときて、映画に合わせて2007年に訳を改めるとともに「アイ・アム・レジェンド」として出版されています。「吸血鬼」というのはどうしてもドラキュラのイメージになるのであまりそぐわないような気もしますし、「地球最後の男」というのは捻りがなく、カタカナにしただけというのもどうかという感じですね。まあケチを付けるだけなら簡単なのですが。

ということでRichard Matheson原作のこの作品は、映画とはいろいろなところがちょっとずつ違うので映画を観たあとでも十分楽しむことができました。映画では相棒の犬がいましたが原作の主人公はたった一人、その後も明るい出来事はほとんどなく最後までハードでダーク、エンディングもだいぶ違います。まあ原作が出版されたのは20世紀半ば、今から50年以上も前のことですから、世界観も大きく違っていたでしょう。そのまま映画化しても一般受けしなかったでしょうから、Will Smithを主役に据えた大作として作るにはあれくらいの変更が必要かもしれません。

今の私達は「ゾンビ」というものにある程度固定されたイメージを持っているかと思いますが、この作品はそのゾンビのルーツたる「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」の下敷にもなっているもの、つまりこの作品以前に私達の知っている「ゾンビ」はいなかったということになるのですから、そういう意味でもなかなか凄い作品ではないでしょうか。死者が甦るという言い伝えのようなものは昔から世界中にあったでしょうが、この作品で描かれているのは名前こそ違えどまさにゾンビです。

それにしてもこのエンディングはなかなか含蓄のあるものです。相手から自分はどのように見えるのか、実は結構難しいものですが、これは普通に生活している上でも意識する必要があるのではないでしょうか。