ポニョ深く考えてはいけないのかもしれません。

名実共に日本を代表するアニメーション作家である宮﨑駿氏は「ゲド戦記」で一旦は息子の宮﨑吾朗氏に道を譲ったかに思われましたが、その作品の出来の悪さに我慢できなかったのか結局再び現役復帰して、「崖の上のポニョ」では原作・脚本・監督をこなしてしまいました。私は「ゲド戦記」をまだ観ていないので実際どうなのかわかっていませんが、内外の評判を聞く限りでは散々なもののようなので一念奮起したというところなのでしょうか。

で、この「崖の上のポニョ」ですが、7月の公開以来日本でも大ヒットを記録していてヴェネチア国際映画祭でも喝采を浴びるなど好評なようです。ジブリ作品については私自身はそれほど好きというわけでもないのですが、子供達はほとんどの作品を観てきていますし、やはり子供には楽しめるものです。今回は義妹が子供達のためにチケットを購入してくれていたので、久しぶりに一家揃って映画館へ足を運んで観に行ってきました。

今さらストーリーなどについては私が語るまでもないと思いますが、アンデルセンの「人魚姫」をモチーフに、現代の日本のどこかを舞台に大幅にアレンジを加えたものです。私ももはや人魚姫の筋書きについてはほとんど覚えていませんが、そのまま残っているようなところは全くといって良いほど無いのではないでしょうか。こうしてほぼオリジナルのものを作り上げてしまうあたりはさすがという感じなのですが、「ゲド戦記」では名前を残しておきながらに多様なことをしてしまったのが大きな間違いだったのでしょうね。

子供達、特に6歳の次男は大変楽しんだようで良かったのですが、大人の醒めた目で見ていると気になってしまうことがいくつかありました。その際たるものは「なぜ自分の親を名前で呼ぶのか」ということでしょう。これには長男も疑問を感じたようですが、日本の常識からは大きく外れているのではないでしょうか。ひょっとしたら宮﨑家ではこれが普通だったりするのかもしれませんが、きっと違和感を覚えたという人は多いでしょう。

また、目を疑ったのは「海で拾った魚(ポニョ)を水道水を入れたバケツに入れてしまう」というところです。さすがに「カルキを抜け」とか「塩を入れろ」とは言えませんが、海の水を汲んでくるようにすれば映画としても不自然にはならなかったはずです。まあ子供向けなのだから細かいところに目くじらを立てるなと言われるのかもしれませんが…

そういう細かいことを除けば大人が観ても可愛らしくほのぼのした、観ていて暖かくなる作品に仕上がっていますので、これはさすがと言うほかありません。やはりこれほどのクオリティのものは宮﨑氏でなければ作ることができないのではないでしょうか。

ちなみに私はエンドクレジットの短さにびっくりしてしまったのですが、いつもこんなものだったでしょうか。お馴染みのテーマ曲1曲分の時間で終わってしまいましたから、ものの3分ほどですね。いつもハリウッド作品の長ったらしいものを見慣れているので、この作品がコンパクトに作られていることを実感できました。しかもただ名前が出るだけでなく、監督がスタッフそれぞれをイメージしたアイコン上のイラストを一人一つずつ添えているのが楽しくて、これは子供でも最後まで観ることができるのではないでしょうか。こんなところもさすがという感じですが、体力的な限界を乗り越えて、次の作品を観せてくれるのでしょうか。