毎月1日の映画の日に夜中一人で映画を観に出掛けるということも最近とうとう恒例となりましたが、今月はこれといって私が注目していた作品がなかったので、今まであまり観ることのなかった、というより避けていたホラーを観ることにしました。私が映画を観る前にいつも参考にしている★前田有一の超映画批評★「今週のオススメ」になっていたということで選んだのが「ランド・オブ・ザ・デッド」です。

ゾンビ映画の始祖、George A. Romero監督による最新作ということで、単に怖がらせるだけでない重厚さを感じさせてくれそうだと期待して行ったのですが、それが間違いであったということに気付くのにさほど時間はかかりませんでした。もともとホラーの苦手な私は始まってわずか15分も経たないうちに、すぐにホールから出て行きたくなってしまいましたが、さすがにそんな人は他にいなかったのでじっと我慢、なんとか最後まで耐えることができました。

実際恐いのは単なるVFXではなく、そのあまりにリアルなVFXが作り出す現実的な世界による心理的恐怖、「本当にゾンビが存在するのではないか」と思わせられてしまうところです。その辺りがさすが元祖、オリジナル、本物というところなのでしょう。私は今日の映画館からの帰り道、そして今も胃が痛くてつらいです…

ところで映画の内容ですが、なぜか死体が突然動き出し、生きた人間を食料として増え始めてからしばらく後、生き残った人間達が都市にこもり、ゾンビ達と戦いながら周辺の町から残った食料を集めながら生活している世界が舞台となっています。ゾンビの方は頭を失なうと死ぬ、というか動かない死体に戻るのですが、知性が低く動作が緩慢なので武装した人間の敵ではありません。しかし人間の方はゾンビに喰われて死んでしまわなくとも、噛まれただけでしばらくするとゾンビと化してしまうので結構あっけなくやられてしまいます。まさに食うか食われるかといった状況がそこにあり、かなり緊迫した未来のない世界で人間が暮らしています。そんな中でも小さな社会を牛耳る強欲な人間がいて…といったストーリーです。

観ている間も、観終わった後も怖いというよりはキモいというのが私の率直な印象になるのですが、実はそれだけではなく生命というものは何なのか、生きているということはどういうことなのかを考えさせられてしまう作品でもあります。ゾンビだって彼らなりに必死で「生きて」いるではないか、人間と一体何が違うのか、ということです。そう思うとたとえゴキブリであっても簡単に殺してしまうのは躊躇われるようになってしまいます。どうして人間だけが特別なのか、それがこの映画の、Romero監督のゾンビ作品における主題なのかもしれません。