Rise of the Planet of the Apes多少無理のあるところもありますが。

日本に住んでいると普段接するのは同じ「日本人」かせいぜいアジア人がほとんどなので、日本人の顔をしていると日本語をしゃべることができるのが当然で、逆にヨーロッパ系の外見をしていると英語をしゃべるのが当たり前というような誤認をしてしまうことが多いのではないでしょうか。実際には中国・韓国などからの観光客などは日本語がわからないでしょうし、反対に日本語が堪能な欧米人や日本で育った日本語しかしゃべれないヨーロッパ系の人というのもいるので思い込みは禁物です。

逆に海外へ行くと自分が日本人であるということを過度に意識して、外見から日本人だとわかるはずだと思い込んでしまうことがありますが、実際には特にアメリカにはアジア系アメリカ人というのが普通にいますから、相手には「なんでコイツは英語がわからないんだ」と思われるだけのことです。アメリカにはほんとうに様々な人種の人が生活していて、彼らは皆「アメリカ人」であるので、社会的基盤による貧富の差などはあるものの、人々は全く別け隔てなく生活しています。

しかしそんな状況はここ数十年のことで、第二次世界大戦の頃には明確な人種差別が存在しました。フランスの小説家Pierre Boulleがインドシナで有色人種である現地人を使う立場にいたところ、日本軍の捕虜となって有色人種に支配される側になってしまったという立場の逆転を体験し、それを元に書かれたのが小説「猿の惑星」なのだそうです。まあその体験は確かにかなり大きな衝撃でしょう。

その「猿の惑星」はこれまでに何度か映画化され、1968年公開の最初の映画は当時最高レベルの特殊メイクのせいもあって大ヒット作となりました。このシリーズはその後儲け主義に走ってしまい堕落していくわけですが、その後Tim Burtonにより原作に忠実にリメイクされました。これはこれで良くできていて私は好きだったのですが、今年はこの前日譚にあたる「猿の惑星: 創世記」という作品が公開されたので観てきました。
Andy Serkis playing Caesar
この作品は原作小説や過去の映画には直接繋がらないオリジナルストーリーとして作られたもので、ここから新しいシリーズがスタートするということのようです。今回描かれているのは「どのような経緯でサル(類人猿)が知能を持ち人類を支配するに至ったか」という点に絞られており、舞台となっているのは近未来のアメリカ、主にサンフランシスコです。

主人公は製薬会社の研究員であるWill Rodmanと、彼が預かったチンパンジーの子供Caesarです。Willを演じているのは映画「スパイダーマン」でHarry Osbornを演じていたJames Francoですが、ちょっと若くてかっこ良すぎやしないかと思ってしまいました。一方、これまでのシリーズではサルたちは特殊メイクで対応していましたが、今回のチンパンジー他サルたちは基本的にWETA Digitalの手によるコンピュータ・グラフィクスで描かれているようですが、Ceasarのモーション・キャプチャを担当したのは「ロード・オブ・ザ・リング」でGollumを演じて以来、第一人者となったAndy Serkisです。左の写真のような様子で演じていたわけですが、さすがこの道の大家だけあって「人間的なチンパンジー」の演技は実に見事なものです。余計な心配かとは思いますが、この人の後を継ぐ人はちゃんといるのでしょうか。

しかし、この作品では妙に人間的な表情を持ち、急に直立してしまうサルたちに違和感を持っている人もいるようです。他に矛盾を感じるところもあるので、私は余りこだわらないで観て楽しむことにしていますが、「観客を馬鹿にしている」と憤りを感じている人もいるようなので難しいものですね。サルたちがあくまでサルらしいままだと「立場の逆転」を説明できなくなってしまいますし、あまり長いスパンになってしまうと多くを省略することになってしまうでしょう。あくまで娯楽作品なのですから、こんなものではないでしょうか。