先日、実家に帰省していた間に、母が買ってくれていたペプシBIG ZEROをペットボトルからコップに入れて飲んでいたのですが、半分ほどボトルに残してキャップを閉めようとしたところ、「こうすると炭酸が抜けにくくなるのよ」と言いながらおもむろにボトルを潰してからキャップを閉めようとしたのでびっくりしてしまいました。「テレビでやっていたから」と母は言うのですが、「いやいや、そんなわけないから」と慌ててやめさせました。私は聞いたことがなかったのですが、調べてみるとそんないい加減な言説がウェブにも見つかりました。
「炭酸が抜ける」というのは、炭酸飲料の液体部分に溶け込んでいる二酸化炭素が気体になってしまう現象ですが、その気体となった二酸化炭素はそのままボトルの外に出てしまうわけではなく、ほとんどはボトルの中に残っていて、次にキャップを開けた時に「プシュッ」という音とともに逃げていくことになります。液体中から気体となるかどうかは主に温度と圧力によって左右するバランスで決まり、気体部分が少ない方が気体化したときに圧力が上がりやすくなるので、飲料の残りが少なくなって空間が広くなるとさらに炭酸が抜けやすくなることになります。
ボトルを潰すことで空間を狭くすると抜けにくくなるという理屈らしいのですが、それだけ聞くと理に適っているようにも聞こえるかもしれません。しかし、潰されたボトルは元に戻ろうとするため、ボトルの空間部分の圧力は低くなり、気体化しやすい方向にバランスが傾いてしまうので逆効果なのです。潰した状態で固定するように縛っておくなどすれば、確かに炭酸は抜けにくくなるでしょうが、普通はそんなことはしないと思います。
別の方法として、ボトルを逆さにして保存すると、キャップのスクリュー部分から気体が逃げにくくなるので炭酸が抜けにくい、という説もありました。しかし先に書いた通り、二酸化炭素は保存している状態でボトルの外に逃げているわけではなく、キャップを開けるときまではボトルの中に残っているので、この方法も効果はありません。ただ、特に害もないでしょう。
実際に効果があるのはボトル内の圧力を高めておくということで、そのための専用器具として炭酸キーパーというものが売られているので、炭酸を保ちたいという人はこれを使うといいのではないでしょうか。ただし、粗悪品もあるようなので注意は必要です。
というようなことを私の言葉だけで説明しても説得力はありませんが、実際に実験して検証された「どうやったら炭酸が抜けないか検証してみました」という記事がありますので、これを見ていただければ納得できるのではないでしょうか。結局、生活の知恵というレベルではどうにもならないということになりますが。


