既にあちこちで話題になっていますが、WWDC (World-Wide Developer Conference)でのAppleのCEO、Steve Jobsの基調講演で、噂されていたIntelプラットフォームへの移行が本当であるということが発表されました。今まで何度も浮かんでは消えていた噂でしたが、今回はWall Street Journalによる報道ということで一段と真実味を増していたのですが、実際に発表されてみると驚かざるを得ません。

Pentium系のi386アーキテクチャが採用されるということですが、PCとしてのハードウェアはApple独自のものになるでしょうから、いわゆるAT互換機でMacOSが動作するというわけではないでしょう。しかし、同系列のCPUが採用されれば相互のアプリケーションの移植は比較的容易になるでしょうし、それよりもこれまでWindows専用というハードウェアが多くて泣いていたMacユーザにとって朗報となりそうなのは、ファームウェアレベルのMacOSへの対応がかなり楽になるので使えるハードウェアが大幅に増えるのではないかということではないでしょうか。

MC68000系からPowerPC系への移行や、MacOS 9からMacOS Xへの移行の際にもエミュレーションによりアプリケーションの移行をスムーズに行ってきたAppleですから、今回もi386によりPowerPCをエミュレートして動作させると発表してきました。その技術にRosettaと名付けてしまうあたりがAppleらしいセンスで関心してしまいますが、Rosettaとは言うまでもなく大英博物館で展示されているロゼッタ・ストーンのことでしょう。3種類の文字が一枚の碑板に刻まれていて、そのうちの一つがギリシャ語であったということからその他の言語の解読が可能になった、というアレです。子供だった私は何気なく展示を見ていましたが、今考えるとかなり凄いものです。

それはさておき、PowerPCからi386へのスイッチというとかなりの決断が必要だったと思われますが、ゲーム機用CPUに軸足を移したIBMに嫌気がさしたところへIntelのラブコールがあったということでしょうか。OS X開発当初からi386用のコードも存在したということですが、Darwinだけではなくその上のレイヤもすでに動いていると言われていたというのが本当だったとは少々驚きです。

アプリケーションの開発はXCodeを使用すればどちらのプラットフォーム向けのものも開発できるようになっている、と言われていますが、エンディアンが違うというのは気にしなくていいようで微妙に違いがあったりしますので、アマチュアが作るアプリケーションについては初期はそれにまつわるバグが目につくかもしれません。私は日頃ビッグエンディアンのCPUに触れる機会の方が多いので、それに慣れてしまうとビッグエンディアンはどうも取っつきにくいのですが…私だけでしょうか。そのほかについても、CPUのアーキテクチャとしてはPowerPCの方が設計的に新しく洗練されていると思うので、i386に統一されてしまうというのはどうも残念な気がしてしまいます。