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The Theory of Everything

今まで何も知らなかった。

2014年にアメリカを中心にIce Bucket Challengeという運動がSNSなどを通じて社会現象となりました。バケツに入った氷水を頭からかぶる様子を動画で公開し、つぎに同じことをやる人を2、3人指名して繋いでいくというものでしたが、これは筋萎縮性側索硬化症(ALS)の研究を支援するための運動でした。氷水をかぶることについての意味は私にもよくわかりませんでしたが、この運動を通じてALSに対する世間の関心を高め、莫大な資金を集めることができたようですので、運動そのものが当初の期待を大幅に上回る成功となったのは間違いありません。

それまで私のALSに関する知識はほぼゼロだったのですが、それでもDr. Stephen Hawkingが患っている難病であるということだけは知っていました。ほとんど体を動かすことができず、機械を通じてのみ意思疎通が可能でありながら理論物理学の権威であるという、二重の意味で平凡ならざる人生を送られたであろう博士も昨年生涯を終えられたのですが、その博士の伝記映画である「博士と彼女のセオリー」という作品を観てみました。

博士と彼女のセオリー (字幕版)

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この作品は博士がまだ健在だった2014年に製作されたものですが、博士の元妻であるJane Hawkingが書いた「無限の宇宙 -ホーキング博士とわたしの旅-」という回顧録を元に、二人の関係を描いたものとなっています。博士がALSを発症する直前に知り合い、発症して余命2年と宣告されたにも関わらず添い遂げる覚悟を決め、その後予想を大幅に超えて何十年も活躍を続けた博士とそのそばにいたJaneの思いが伝わってくる映画でした。しかしただ美しいだけでなく、現実として存在するであろう様々な問題についても考えさせられます。

本作ではEddie RedmayneがDr. Hawkingを演じていますが、Eddieはこの役でアカデミー主演男優賞などいくつもの賞を受賞しており、完全に本人にしか見えないような迫真の演技を見せてくれています。本人の写真を見てみてもまったく違和感がなく、Eddie以外にこの役が務まったとは思えません。Jane役は私にとっては「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」のJyn ErsoでおなじみのFelicity Jonesですが、童顔の彼女なので老けメイクをしても若々しく見えてしまうのは良いのか悪いのか微妙なところです。

ちなみに博士が初期に提唱した「ホーキング放射」、ブラックホールが何もかも吸い込むだけではなく熱的な放射があるという理論的予言は、今年になってEvent Horizon Telescopeによって「撮影」された画像によって人々の目に触れることになりました。実際には予言に基づいてそれらしい画像を探したということのようですが、それまでイメージ図でしかなかったものが写真として見ることができたことで、Dr. Hawkingの理論が単なる計算上のものなのではなく、現実であると実感できたような気がします。

Fantastic Beasts: The Crimes of Grindelwald

純粋な娯楽作品だと思えば…

「ハリー・ポッター」シリーズの世界観を拡張して成功を収めた「ファンタスティック・ビースト」シリーズの第2作「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」が、前作「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」からちょうど2年ぶりに公開されました。スタジオも満を持した大作ということでテレビなどでの露出も力が入っていますが、前作が期待以上に楽しめたので今回も大いに期待して観に行きました。

主役は引き続きEddie Redmayne演じるNewt Scamanderです。Eddieはとても素晴らしい俳優だと思うのですが、もう3年近くも前に観た「HICK ルリ13歳の旅」で見せた狂気が本当に恐ろしくて、未だにその影がちらついてしまいます。役のイメージが付いてしまうことを嫌ってヒット作の続編に出演したがらない俳優もいるということですが、それはこういうこともあってなのかもしれません。また本作では若き頃のAlbus Dumbledoreが登場しますが、これをJude Lawがダンディーに演じており、敵役は黒い魔法使いと呼ばれるGellert Grindelwaldで、これを演じるのはJohnny Deppです。

BuzzFeedでは酷評(日本語訳)していますが、そういうメディアなのだとしてもそこまでボロクソに言わなくてもいいのではないかと思うものの、Rotten TomatoesのTomatometerも40%と評論家の評価は芳しくないようです。BuzzFeedでその大きな原因としているのがGrindelwaldのキャスティングですが、私はそこまで問題があるとは思いませんでした。確かに大げさでわざとらしい感じはありますが、それはJohnnyならではのものでもあると思うので、Johnnyを配置した時点で決まっていたことではないでしょうか。

しかし、私自身もこの作品を観て、面白かったかと聞かれるとなかなか微妙です。つまらなかったというわけではないのですが、ファンを喜ばせようというサービス精神が見えすぎて、それはBuzzFeedと同意見ということになります。その結果、抑揚がなくダラダラとした感じになってしまっているのではないでしょうか。全編に渡って盛り上がり続けるジェットコースタームービーというものもありますが、そこまで盛り上がるわけでもないのです。とはいえ、ハリー・ポッターシリーズのファンであればそこかしこに小ネタが仕込んであったりするので、それなりには楽しめるのではないでしょうか。

なおGrindelwaldといえばスイスのBerner Oberlandにある有名な観光地で私も子供の頃に行ったことがありますが、大変美しいところです。この地名と魔法使いの名前を重ねてしまう人はあまりいないと思いますが、風評被害のようなことがないといいのですが…まあ関係ありませんね。

Fantastic Beasts and Where to Find Them

魔法生物がNo-Majに知られていないのはなぜ?

今週末は東京で私の中学校の同窓会があったため、金曜日に休暇を取って東京の親元に泊まってきました。自宅から東京に行くにはやはり新幹線が一番楽なのですが、出張などでいつも乗っているので面白みがありませんし、ちょっと高いです。いっそのこと丸一日かけて普通列車で行くのも面白いのではないかとも思ったのですが、それなら青春18きっぷが使えるときでないとそれほど安くもないのでもったいない気がしてしまいます。かと言って夜行バスは疲れてしまいますし…ということで結局、早めに予約すればだいぶ安く利用できるスカイマークで行くことにしました。飛行機で行くというと「贅沢な」と思われがちですが、実際には新幹線よりも数千円は安く上がります。

ということで金曜日の午後早いうちに東京に到着する便が予約できたので、夕食までの間にちょっと遊びに行こうと思ったのですが、結局映画を観に行くことにしてしまいました。しかしせっかく東京で観るのですから、地元にはないものということでTOHOシネマズ新宿の「プレミアボックスシート」を体験してみることにしました。このシートは大きくフカフカの革張りシートと、左側に荷物や上着の置き場、そして左右を仕切る衝立からなっていて、左右の気配に邪魔されることなく映画に集中できるものです。通常の料金に対して追加料金が1000円となっていますが、一人で映画に没入したいという人にはいいと思います。しかし、私が見ているときにもカップルで利用している人がいましたが、衝立で隣の席は見えないようになっているのでデートにはカップルシートなどの方がいいでしょう。

それはさておき、私が今回観たのはハリー・ポッターシリーズの新作「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」です。この作品は「ハリー・ポッターと賢者の石」の作中で教科書として登場する書物「幻の動物とその生息地」を原作としたもので、この本の著者とされるNewt Scamanderが主人公として描かれています。

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本作の舞台となっているのは1926年のアメリカ、ニューヨークで、Newtはイギリスからトランクを片手に訪れますが、このトランクの中身が騒動を巻き起こすことになります。今回は舞台を米国に移し、また時代も遡ったことで、これまで8作続いたシリーズから空気を入れ替えることに成功しているようです。また、同じ英語が使われているようで実は違う、ということをネタにしているところもあり、例えばイギリスではMuggleと呼ばれている「魔法使いでない人」のことを、アメリカではNo-Majと呼んでいることになっているのですが、そのひねりのないところが実にアメリカらしくてリアルです。

主人公のNewtを演じているのは、「HICK ルリ13歳の旅」でEddieという青年の役で怪演を見せていたEddie Redmayneですが、今作ではこのEddieがとてもいい演技で、彼のおかげでこの作品が一際良いものになっているのではないかと思います。HICKにしろ「リリーのすべて」にしろ決して二枚目とはいえない役柄で名演を見せていることもあり、現代で一番の若手個性派俳優と言って良いでしょう。といっても私はまだ「リリーのすべて」を観ていないので、可及的速やかに観ておきたいと思います。

ヒロインのTina Goldsteinは後にNewtの妻になる人ですが、それを演じるのはKatherine Waterstonです。若干影のある表情が印象的ですが、「スティーブ・ジョブズ」でJobsのガールフレンドであったChrisann Brennanの役で登場していたときも、どことなく不幸せそうな表情でヒステリック気味な様子で、こちらもまた個性的な女優なのかもしれません。間違いなく綺麗な人ですし、笑顔はとても素敵なのですけどね。ちなみにKatherineは来年公開される「プロメテウス」の続編、「エイリアン: コヴナント」の主役となっているようですので、こちらも気になるところです。

またNewtに絡むNo-Maj、Jacob Kowalski役のDan Foglerはどこかで見たと思ったら「ファンボーイズ」に出演していたのでした。この作品には彼のようなキャラクターが必要ですから、まさに適役だったというわけです。

この作品の見所の一つはたくさん登場する魔法生物たちでしょう。もちろんそれぞれ魔法の力を持った個性的な生物なのですが、それらを映像的に作り上げるのも大変だったことでしょう。しかし、どうしても感じてしまうのは、なぜ我々が知っている生物とは似ても似つかないものだったりするのか、一方なぜ人間の魔法使いはあくまで人間なのか、ということです。そういう理屈っぽいことを考えてしまってはいけないのかもしれませんが、私はここにやや引っかかるものがあります。

このほか字幕にいくつか誤訳があったりもしてそれも気にはなりましたが、全体的な作品としてはあの「ハリー・ポッター」シリーズの新作にふさわしい、非常に楽しい作品になっていることは間違いないと思います。この新シリーズは5部作となる予定らしいので、今から続編が楽しみです。