Junoオジサンも参った??

当初は7館のみの上映だったのに、口コミや各種の賞を受賞したことで評判が評判を呼んで最終的には2400館以上に拡大され、アカデミー賞では主要4部門でノミネート、脚本賞を受賞という栄冠に輝いた「JUNO/ジュノ」を観てみたのですが、とても良かったです。ちなみにJunoというのは主人公の少女の名前なので、この邦題の表記はちょっとどうなのかという気がします。

JUNO/ジュノ (字幕版)
JUNO/ジュノ (字幕版)

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(2013-11-26)
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16歳の高校生が妊娠してしまい、その後養子に出すつもりで生む決意をしてからの9ヶ月間を追ったストーリーということで、現実的に考えるととても悲愴なものか、あるいは無茶苦茶で見ていられないようなものになってしまいそうな気がしますが、そこは映画ということで主人公Junoの明るさと賢さのおかげで楽しいドラマになっています。

Amazonのカスタマーレビューでは

第一に、このように利口な少女が、避妊に失敗するというところから、話に整合性が無い。
第二に、子供を生んだ後、子供への責任や愛情を無視している。

などといって日本人には馴染まないとしている人がいますが、そんなことにこだわっていて人生楽しいですか、と聞きたいところです。だいたい妊娠については利口かどうかなんて関係ないような気がしますし、子供に対する責任や愛情なんて万国共通、あらゆる生きものが本能的に備えているものではないのでしょうか。

とはいえ、養子縁組が社会に根付いているということについては日本とは明らかに違うところでしょう。日本で養子といえば大抵婿養子のことでしかなく、産んだ子供を育てられない学生がその子供を養子に出すというようなことは考えにくいことです。つい先日もトイレで出産してそのまま殺してしまった高校生の事件がニュースになっていましたが、いわゆる赤ちゃんポストのようなものしか受け皿になるものがない日本と比べて、養子縁組がシステムとして確立しているのは堕胎はおろか避妊まで禁じられているカトリック教徒が多いアメリカならではでしょう。

ちなみに本当は日本でも堕胎は犯罪なのですよね。本当は、というのは母体保護法が適用される範囲では認められているからで、安易な中絶は本来認められるべきではないのですが、あまりに若かったり生活基盤が確立していなかったりで責任の取れない場合は親になる方も生まれてくる子供も不幸になることがあるでしょうから、仕方のないことはあるでしょう。しかし、デキちゃったら堕ろせばいい、なんていうような考えは言語道断です。

それはともかく、この作品でJunoを演じているのはX-Men: ファイナルディシジョンではKittyを演じていたEllen Pageですが、このEllenの演技力はなかなかで、この作品でアカデミー主演女優賞にノミネートされただけのことはあります。Junoというのは非常に個性的で利発な女の子で、こんなしっかりした個なら立派に子育てできてしまうのではないかとも思えますが、まだまだ人間関係についてなどは子供っぽいところもあったりして、それをEllenの演技ではとても自然に見せてくれています。

ということで、可愛い高校生にすっかり参ってしまったのは作品中のMarkだけではないわけですが、温かい気持ちで観ることができるとても良い映画でした。やはり「日本人には馴染まない」ということなのか、日本ではそれほど話題にならなかったようですが、こういう映画が大ヒットするアメリカもまだまだ捨てたものではないな、と感じました。