Benjamin Buttonこれは思わぬ拾いもの。

なぜかヴァンパイア物が好きな私は昨日が「アンダーワールド・ビギンズ」の公開日であることを当日の夕方になってから思い出し、慌ててシネコンのホームページを確認してみるとそれが上映されていないことがわかってガックリ来たのですが、主演はKate Beckinsaleではないし、前評判をほとんど聞かないところを見るとやはり今一つなのかなということでDVDで観られればいいかと思い直しました。

しかし、一度映画館に行く気になってしまったのでこうなったら他の作品でもと調べてみると、最新作では前日に公開されたばかりの「ドラゴンボール・エボリューション」がちょっと気になります。しかしこの作品は前評判が散々で、ダメ作品だということがわかっていて観に行くほどの余裕があるというわけではないと思いとどまり、アカデミー賞の各賞を受賞していて確実に良作と保証されている「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」を観に行くことにしました。

やはり流行り言葉で言えば「鉄板」となる作品であるだけあり、終演が深夜12時を過ぎるレイトショーであるにも関わらずずいぶん人が入っていて驚いたのですが、アカデミー賞外国語映画賞を受賞して凱旋上映されている「おくりびと」の方はさらに混雑していて、二人列びの席も取れないようでした。まあ「おくりびと」の方は来週にはDVDが発売されるので、こちらはDVDで観ることにしています。

さて、「ベンジャミン・バトン」のストーリーは、80歳の老人の状態で生まれ、それを悲観した父親にすぐに捨てられてしまったBenjaminが老人ホームの職員であるQueenieに拾われて育てられ、成長するにつれ若返る一生を綴った作品になっています。最初その設定だけを聞いた時、何という非現実的なトンデモ作品なのかと思ってしまいましたが、実際に一つの映画作品となったものを観るとそんなことは一切問題とは思えない、非常に素晴らしい作品でした。3時間弱という長い上映時間の間に退屈するようなことも全くなく、ラストも予想できる範囲内ではあっても感動を呼ぶ印象深いものとなっていて、じんわりと心に残るものがありました。

少年の姿の頃を除きBenjaminを演じるのはBrad Pittですが、背は小さいのに姿形は老人という少年期から、見た目は十代の若々しさという壮年期までの姿を違和感なく表現できるのは現在の特殊効果の技術があるからこそでしょう。実際、この原作は70年代にSteven Spielbergの監督デビュー作として企画されていたが断念したそうですが、無理もなかったでしょう。

しかし、特殊効果はBenjaminばかりではありません。Benjaminと互いに生涯愛し合う人となるDaisyもなかなかで、冒頭から登場する死の床にある老婆の姿を演じているのもCate Blanchettのようですから驚きです。Cateはこういう姿を演じていてどう思っていたことでしょう。

また、Benjaminが生まれたのは第一次世界大戦終戦直後の1918年ということなので、その20世紀初頭から末までの街並みの変化を見ることができるのも楽しみの一つかもしれません。第二次世界大戦での戦闘シーンはちょっとどうなのかと思うようなところもないではありませんが。思いっきり「ジャップ」呼ばわりされるのも気分のいいものではありませんし。

まあそれはともかく、「たまには『いい映画』でも観るか」くらいの気分で観に行ったのに、予想以上に楽しむことができて非常に満足感のある作品でした。これで「ドラゴンボール』なんて観に行っていたらどれだけ後悔していたことか…