今年は暖冬で春の訪れも早いかと思っていた矢先、3月に入って急に気温が下がってまだまだ寒い日本ですが、夏が終わりにさしかかっている南半球では2007年のF1シリーズの第一戦、オーストラリア・グランプリがついに、というより、ようやく開幕しました。オーストラリア南部の都市メルボルン市内のAlbert Parkにある湖の周りの周回道路を利用して行われるグランプリで、普段は一般の道路として使用されているので路面が滑りやすく、また例年シーズンの初戦となることもあって荒れやすいグランプリとされています。まあそれにしても公園にグランドスタンドがあったり、上空から見てもはっきりとグランプリコースがわかるくらい、グランプリの開催が優先されていることが伺えます。
さて、ミハエル・シューマッハが昨シーズン限りで引退を決めたため、今シーズンの上位各チームのドライバー・ラインナップは大きく様変わりしました。今はまだフェラーリに移籍したライコネンの赤いスーツや、マクラレンのアロンソの白いスーツにはかなり違和感がありますが、近いうちになれることができるでしょうか。ホンダやトヨタのドライバーに変更はありませんが、SAF1での琢磨のパートナーにはF3時代から縁のあるデビッドソンが起用され、ホンダチームでのテストドライバーとしての彼の経験に大いに期待がかかります。
また各チームともニューマシンを携えてきているわけですが、グランプリウィークに入ってようやく発表することができたSAF1の新車SA07はメルボルンでのフリー走行が事実上のシェイクダウンとなってしまい、不安と期待の入り交じる中での開幕となってしまいました。しかしながら実際に蓋を開けてみれば昨年のホンダ車をベースとするSA07は期待以上のパフォーマンスを発揮し、ホンダ本家をも脅かし、時には上回るほどの走りを見せてくれる物で、フリー走行ではデビッドソンが4番手のタイムを記録するというニュースには私も驚かずにはいられませんでした。
こうして期待の高まる中行われた予選、琢磨にはまずは上位16台に入って第1セッションを突破して欲しいというのがチームやファンの願いだったわけですが、この願いが叶うどころか何と上位10台に入って最終セッションまで生き残ってしまうという、嬉しい驚きが待っていました。結局10番グリッドからのスタートとなりましたが、BAR Honda時代には攻められることはあっても褒められることはなかったこのポジションが、今のSAF1にとっては夢のような出来事です。
ここからのスタートであれば荒れるオーストラリアGPのこと、堅実な走りでポジションを守ることさえできれば入賞もあるのでは…とこちらも欲が出てきてしまいましたが、結局そこまではうまくいくものではありませんでした。本戦レースの内容についてはF1-Live.comなどの専門サイトをご覧いただくことにしたいと思いますが、SAF1の2台は無事に完走を果たし、まずまずの結果で終えることができたのではないでしょうか。結局ホンダ本家の2台とはそれぞれ1位違いでフィニッシュしていますから、まずはこれで十分ですね。
しかし、このクルマがあまりによい結果を出してしまったもので、「チームは車体を製造しなければならない」というコンコルド協定に違反しているとした他チームからの提訴は免れることはできなくなってしまいました。ホンダに似すぎているというのが訴えの根拠だそうですが、設計は元にしているのだから似ているのは仕方ありません。それを言ったらデザイナーが移籍したらどうするのかという話です。SAF1はちゃんと自分のところで製造しているから問題ない、と落ち着いている様子ではありますが、見えない力が様々な方向から働いているF1の世界ですから一体どうなることか、なかなか安心することもできませんね…このせいでスッキリ気持ちよく今回の結果を祝えないのが残念です。