ASCIIまさに十年一昔

パソコン雑誌の老舗中の老舗、アスキーが発行する週刊のパソコン雑誌である「週刊アスキー」は、週刊であるということにより情報の鮮度が高いということだけでなく、価格が安く薄手なのでかさばらず、内容も軽くまとめられているので気楽に読めるということもあり、一時期私は出張の折に新幹線の中の暇つぶしのためによく購入していました。数年前に滅多に出張のない業務に異動になってからはその機会もなくなりましたが、外出先でちょっとまとまった時間を潰さなければならないときなどは重宝しています。

この週刊アスキーが1997年の創刊以来ちょうど10周年ということで、今週号が10周年特別号となっているので久しぶりに購入してみることにしました。普段の定価330円と比べると大幅に高い420円という特別定価にはなっていますが、ページ数は大きく増加しているため製本も普段の中綴じから無線綴じに変わっていて価格相応かそれ以上に立派なものとなっているので、他のパソコン雑誌と見比べるとかなりお買い得に見えてしまいます。

週刊 アスキー 2007年 12/11号 [雑誌]
発行:アスキー
アスキー (2007/11/26)
ISBN/ASIN:B000YKXRN8

内容の方はこれまでの10年を振り返る内容の特集が組まれたりはしていますが、基本的に普段の週刊アスキーの内容をそのまま充実させたようなものになっているので、余計な背伸びをしていないところに好感が持てます。どうも広告の割合が大きいような気はしますが、そのおかげでこの値段が実現できているのでしょうから文句は言えません。

巻頭の元編集長のコラムでも経緯が触れられていますが、現在の週刊アスキーが創刊する数ヶ月前にはアスキーが一般週刊誌を発行するということがニュースになっていました。その時「どうして?」と思ったのは私だけではないだろうと思いますが、やはりその直感は裏切られることなくわずか3ヶ月あまりで打ち切られてしまいました。一般週刊誌なら他にいくらでもあるのに、どうしてパソコン関連の出版社であるアスキーが発行するものが選ばれると思ったのでしょうか。興味本位で私もしばらく経って安定した頃に一度は買ってみようかと思っていたのですが、それも叶わずじまいでした。まあそれはともかく、それまで隔週刊であった「EYE-COM」を週刊化して新たなパソコン週刊誌として仕切り直しすることになって今に至っているわけです。

それにしても10年前といえばPCのOSもWindows 95の時代、今ほどインターネットも一般には普及していなかった頃ですから、パソコン雑誌を取り巻く環境も大きく様変わりしてしまいました。今は最新のニュースはウェブで得られるようになってしまいましたので、雑誌にはニュースソースとしての価値はほとんどなくなっており、特集記事などによるまとまったテクニックやノウハウ、受動的に得られる幅広い情報といったようなものが求められているのではないでしょうか。そして必然的にこういった雑誌を読みたいという人は以前より減ってしまっているでしょうから、パソコン雑誌というジャンル全体としてどうしてもジリ貧傾向にあるのは仕方のないことでしょう。何しろ最もインターネットを使いこなしているであろう人達を読者としているのですから。そんな中で生き抜いていける雑誌は多くはなく、ここ数年で多くの伝統あるタイトルが淘汰されていってしまいましたが、週刊アスキーがこうして健在なのは他に似たような雑誌がないということに尽きるでしょう。やはりオンリーワンであるということは大きな力です。