確かに鉄道マニアがいるならエレベーターマニアがいても
「名前重要」というのはプログラミング言語Rubyの開発者、まつもとゆきひろ氏の好きな言葉だそうですが、そのココロは「どんなに優れた物、サービスでもそれが広く利用されるようになるかどうかには名前の良し悪しが大きく影響する」というところにあります。また人の名前であれば一生背負っていくものだけにその命名により人生が左右されるということもあるでしょうし、プログラミングの上では関数や変数にわかりやすく意味のある名前を付けることが品質と保守性を高めるために重要かつ基本的な事柄です。にも関わらずうちの連中はいくら言っても一時変数にbuf1
, buf2
というような名前を多用するのですが、基本的な教育を受けていないので仕方ないのでしょうか。
前振りから横に逸れましたが、本のタイトルというのも潜在的読者の目を引くために重要なのは間違いありません。今回は「エレベスト – 日本初のエレベーター鑑賞ガイド」という本を読みましたが、これがもし単に「エレベーター鑑賞ガイド」などであったら手に取ってみたかどうか…ひょっとしたら見たかもしれませんが、その後記憶に留まったかどうかはやはり疑問です。
本書は最近ここでもご紹介したダムや工場といったものと同じ流れでエレベーターを愛でる人の本なのですが、先の2つが基本的に写真集の体裁であるのに対し、本書は新書版で写真も多いものの紹介文なども多く、またコラムや「工場萌え」の著者大山氏とのインタビュー、エレベーターに因んだ4コマ漫画や短編小説などもあって色とりどりで盛りだくさんの内容になっています。これらを見ていると著者のエレベーターへの想いが伝わってくるようで、なんだか微笑ましい感じさえしてきました。
紹介されているエレベーターは新旧様々な国内の25基、どれも個性的なものばかりで、これらを見ていると確かにエレベーターも多種多様で飽きないような気がします。普段自分が乗るようなエレベーターは何の取り柄もないような、極めて事務的なものばかりですが、最新の高層ビルや高級ホテル、観光地などではその施設のイメージの鍵ともなるものなので、趣向の凝らされたものが設置されていますね。
設置台数からいっても圧倒的に集中していて仕方がないのでしょうが、本書で取り上げられているエレベーターはどうしても首都圏に偏ってしまっていますので、私が乗ったことがあるというものはあまりありませんでした。しかし素人の私から見ても魅力的なエレベーターばかりで、いつか乗ってみたいという気になってきます。なお、本書にある中では子供の頃に乗った日本橋三越のマニュアル操作のエレベーターが幼心にも印象的でした。蛇腹扉のエレベーター自体は海外では珍しくも何ともないんですけどね。
ちなみに本書も2基取り上げられている斜行エレベーター、確かに数の多いものではないので一般的には珍しいものではないのでしょうが、実は私にとっては何でもなかったりします。というのは、我が家のマンションは傾斜地に建つ階段状の建物になっていて、斜行エレベーターが設置されているからなのです。エレベスト的には恵まれた環境なのでしょうし、来客は珍しがって喜んでいるようなのですが、これが構造的に仕方のないことながら遅くて遅くて、住民や宅配業者はイライラするばかり…冗談抜きで階段の方が圧倒的に早いので、荷物がなくて疲れていないときには私も階段を利用します。例えばリニアモーター駆動で高速な斜行エレベーターとか、安価で開発してもらえないものでしょうか。