リビング・ヒストリー – ヒラリー・ロダム・クリントン自伝

Hillary Rodham Clinton世界最強の女性

アメリカ合衆国大統領夫人はthe First Ladyと呼ばれますが、その他一般の政治家や公職者の夫人とは異なり公的な役割も要求される特別な立場になります。しかし、通常その役割というのはあくまで儀礼的・社交的なものや、象徴的なものに限られるものですが、政治的な役割も果たそうとしてしまったのが第42代大統領Bill Clintonの夫人であり、その後上院議員、大統領選挙指名候補者を経て現在は国務長官を務めているHillary Rodham Clintonです。その経歴は他の誰に似るものでもない極めてユニークなものであることは間違いない、ということで自伝「リビング・ヒストリー – ヒラリー・ロダム・クリントン自伝」を読んでみました。

この本は2003年に出版されたものなので上院議員1期目半ばにあたりますから、この時はまだ大統領選への立候補など本人もさすがに考えていなかったでしょう。しかし、本書の内容は「ファーストレディの自伝」と聞いて普通に想像するものとは全く違い、かなり政治色の濃いものとなっています。もちろんHillary自身の生い立ちやBillとの馴れ初め、アーカンソー州知事時代と大統領選のキャンペーンの様子なども書かれてはいますが、それは最初の2割ほどの部分で終わってしまいます。

彼女がクリントン政権の1期目に尽力したのは健康保険問題です。国民皆保険という今の日本では当たり前のことがアメリカでは未だ行われておらず、貧困層がろくな診療を受けることができなかったり、保険会社が保険金を出し渋ったりという問題が起こっているので、これを何とかしようという映画SiCKOのテーマにもなっていた問題です。基本的に共和党は富裕層の代弁者なので、保険会社や医療関係者に負担を強いるこの問題には強硬に反対され、結局Hillaryは涙を呑む結果に終わってしまったわけです。

2期目はこの反省もあってあくまで大統領夫人としての立場で外交などに活躍の場を求めたようですが、その後半は1期目から執拗な攻撃を受け続けた「ホワイトウォーター疑惑」に派生するMonica Lewinskyのスキャンダルに翻弄され、あまり輝かしいことばかりでもなかったようです。まあ自伝ということでHillaryの立場から語られていることだけなので、「疑惑は無実」というのもどこまで本当なのかわかりませんが、政策で対抗できない野党がスキャンダルを攻撃のネタにするというのは日本だけでもないということはよくわかりました。

当時私には大統領が職責には問題ないのに不倫くらいでなぜ弾劾裁判まで受けなければならなかったのかということでしたが、それはやはりこの本を読んでみてもおかしいことだったようです。大統領たるもの国民の模範でなければならないということなのかと無理やり納得しようとしていましたが、それでもアメリカでいう弾劾とは憲法第2条第4節で

大統領、副大統領及び合衆国のすべての文官は、反逆罪、収賄罪又はその他の重罪及び軽罪につき弾劾され、かつ有罪の判決を受けた場合は、その職を免ぜられる。

とされているわけで、姦通罪があるわけでもないのに何を根拠にしているのかはわかりません。

それはともかく、この本はホワイトハウスの内情を知るという意味でも興味深いものだったのですが、アメリカの内政に関する記述や共和党との政争についてはあまり関心が持てる部分でもなく、正直なところ荷が重いようなところもありました。700ページを超えるボリュームがあるということもあって、読了には2週間近くもかかってしまいましたが、読み終わる頃にはすっかり民主党支持者になってしまいそうです。といってももちろんアメリカの、ですが。

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