工場同好の士も少なくないようです。

先日も「ダム」という本を見ましたが、ここ何年か一部方面で土木・建築が盛り上がっているようです。といっても専門的な視点からではなく、あくまで「見て楽しむ」ということが第一にあり、「愛でる」という言葉がぴったり合うのではないかと思います。その対象はダムの他、ジャンクション団地水門高架下など様々ですが、それぞれ奥深い世界があるようです。今回はそうした中の一つ、工場を愛でるための写真集「工場萌え」を見てみました。

工場萌え
写真:石井 哲
東京書籍 (2007/03)
ISBN/ASIN:448780163X

ここでいう工場というのは主に製鉄所や化学工場などの大型コンビナートで、煙突が林立し、縦横無尽にパイプや通路が巡らされている複雑な情景を楽しむということのようです。基本的に美観は特に考慮せず、機能性だけを追求して造られたものであるにも関わらず、それが逆に美しいという「機能美」の世界ということでしょう。

私も子供の頃から工場にはなぜか惹かれるものがあり、学校の工場見学の時などには人一倍ワクワクして臨んだものです。しかし、私の場合には外観もさることながらモノを造る工程を見ることの方が好きだったので、今でも勤務先の量産現場に用があって行くときなどは密かに楽しんでしまっているのですが、工場の外観については何となくワクワクはするもののあまりじっくりと見たことはなく、ましてや写真を撮ったことなどはありません。しかしこうして写真集として見てみると、じっくり見れば見るほど引き寄せられるものがあります。

この写真集では昼の写真も夜の写真も収録されていますが、特に夜の風景は暗闇の中に浮かび上がる設備がくっきりと描き出され、まるでCGのようです。ここでこれらの写真を引き立てているのは光源から光条が伸びていることですが、おそらくクロスフィルターが使われているのでしょう。これまではフィルターを使用して写真に手を加えることはあまり好きではありませんでしたが、このように使われると非常に効果的だということがわかったので、私もちょっと欲しくなってしまいました。そう高いものではないので、きっと遠からず購入してしまうことでしょう…

ちなみに新名神高速道路が開通して以来、私は帰省の際に伊勢湾岸自動車道を経由しているのですが、大抵暗くなってからここを通過する帰り道、左手に見える名古屋港に立ち並ぶガントリークレーンの群れは照明が当てられてなかなか幻想的で、思わず目を奪われそうになります。さすがに高速道路上で車を停めることはできないのでそのまま通過しますが、いつか写真に収めたいものだと見る度に思っているのでした。まあこれは工場ではありませんが、港湾施設というのもそれに近いものではないでしょうか。