豊稔池堰堤何にでもマニアはいるもので。

田中康夫前長野県知事の「脱ダム宣言」を引き合いに出すまでもなく、ダム建設というのが必要とする資金の膨大さや与える環境負荷の大きさなどもあり、またゼネコンと自治体との癒着などの問題もあって議論の対象となっているのは皆さんご承知のことでしょう。しかし、一旦造ってしまったダムについてはせっかく作られたのですからしっかり活用しなければ余計もったいないものです。

ダム建設が否定される原因の一つには、ダムそのものは下流の治水や発電を目的として建設されるものなので、近所にダムが建設されたりダム湖に水没したりという影響を受ける人たちには直接的なメリットが発生しにくいということがあるのではないでしょうか。最近ではそういった住民感情をなだめるためもあるのか観光目的で一般開放するような動きも拡がっているようですが、ダムに遊びに行くというのはまだまだ一般的なものではないでしょう。

しかしそんなこととは関係なく、巨大建造物としての佇まいや細部の造形に魅せられた「ダムマニア」と呼ばれる人達がいます。日本の津々浦々のダムを巡ってはダムを眺め、写真を撮り、できれば内部を見学し…と堪能するようですが、ダムというのは往々にして山の奥深くに造られるものなのでなかなか敷居の高い趣味なのではないでしょうか。そこで、そんなダムマニアの一人、ダムサイトを運営する萩原雅紀氏の「ダム」とその続編「ダム2」という本で私もその魅力を垣間見てみました。

ダム
著:萩原 雅紀
メディアファクトリー (2007/02/16)
ISBN/ASIN:4840118043
ダム2(ダムダム)
著:萩原雅紀
メディアファクトリー (2008/01/16)
ISBN/ASIN:4840121265

日本には2500あまりものダムがあるということですが、さすがにその全てを収めることはできないので、「ダム」では著者のお薦めのダムが36カ所紹介されています。著者が関東在住ということで東日本から北日本のダムに集中してしまっているのですが、「ダム2」の方では中日本から西日本にかけての47のダムが紹介されており、近畿に住む私にとっては「ダム2」の方が実用的と言えます。

この2冊の本はカラーのきれいな写真で各ダムの迫力を伝える写真集であるわけですが、それと同時にダムマニアならではの紹介文も添えられていて、ガイドブック的にも活用することができそうです。しかしながら残念なのは各ダムの正確な所在地は掲載されていないことで、今はちょっと調べればすぐにわかるとはいえ、どうせなら教えてくれてもいいのに…と思ってしまいました。ということで、せっかくなので掲載されている全てのダムについてGoogle Mapsのマイマップにしてみました。

ちなみに右上の写真は私が豊稔池堰堤に行ったときに撮ったものです。この時は近代化遺産としてこのダムを見たのですが、巨大建造物としての迫力もありとても見応えのあるものでした。このダムは「ダム2」の表紙にも掲載されているものですが、ダムとしての規模はそれほど大きなものではないので、これより大きな、新しいダムにはまた違った魅力があって楽しめるのではないかと思います。この2冊の本を見ていると、すぐにでもどこかのダムを見に行ってみたくなりましたが、やはり大抵山の中なのでお手軽には行けないのが残念です。