世の中には2種類の人間がいる。論理的に考えられる人とそうでない人だ。
最近ろくにテレビを観なくなってしまい、特にドラマについては全くと言っていいほど観ないのでつい最近まで知らなかったのですが、「ガリレオ」というドラマが面白かったらしいですね。またちょうど今は同じシリーズで映画「容疑者Xの献身」というのも上映されていて人気が高いようですが、邦画もまたほとんど観ない私なのでどんな映画なのかもよく知りませんでした。また実際に「面白い」と人に聞いてもそれほど興味が持てないのは一体どういうことなのか、私自身にもわかりません。
しかし、その原作である東野圭吾氏の小説「ガリレオ」シリーズが非常に面白く、「容疑者Xの献身」では直木賞を受賞しているということになれば話が別です。テレビドラマや映画の方では主演の福山雅治や柴咲コウの人気で引っ張っているだけなのではないかと邪推してしまいますが、小説ではそういう手は使えませんし、表紙を見ても至って地味なものです。これは本当に面白いに違いない、ということで私も読んでみることにしましたが、実は決め手となったのは友人がTwitterで呟いていた一言だったりもします。
私は例によって図書館で借りて読んでいるわけですが、図書館でもこのシリーズの人気は大した物で、蔵書が20冊ほどあるにも関わらず2桁以上の人が待っていて、予約をしても順番が回ってくるのは一体いつなのかもわからない状態です。幸いにしてこのシリーズは登場人物の繋がりはあるものの一話完結の形を取っているので、必ずしも順番通りに読んで行かなくても話が通じるので全く問題ないようです。まあそうはいってもやはり最初は1巻目から読んでみたい、ということでこの「探偵ガリレオ」からにしました。
この本は短編集の形になっているので、ドラマの原作としてはちょうど良かったのでしょう。実際にドラマ各話のストーリーを見てみると、最終話を除き小説の1編がちょうど1話になっているようです。一方、映画の原作となっている「容疑者Xの献身」は長編なのでまたぴったりおあつらえ向きだったと言え、むしろそれを狙ったのではないかとさえ思えます。
それはさておき、基本的な設定として、警視庁の刑事が大学時代の友人である物理学助教授の助けにより事件を解決する、というのが各話共通のことで、この助教授に付けられたあだ名が「ガリレオ」というわけです。著者が理系出身であるらしく、用いられているトリックが極めて理系的で、かつ現実的であることが大きな特徴とされています。たとえ名作と言われているような推理小説でも、「そんなばかな」というような非現実的なトリックで説明が片付けられてしまい、すっかり興醒めしたというようなことが特に理系的思考の人には一度や二度ならずあるのではないでしょうか。このシリーズにおいてはそういう心配は無用と言えるかもしれません。
しかしながら残念なことに現実的であるが故に問題となるのは、あまり伏線を張りすぎるとトリックが早くバレてしまうということです。「探偵ガリレオ」は5つの章に分かれているのですが、そのうちの2つについてはだいぶ早い時点でトリックがわかってしまい、最後は「やっぱり」ということになってしまいました。ただそれも私が理系の端くれだからということなのかもしれないので、世の中の多くの人にとっては問題ないのかもしれません。実際、私の妻には全くそんなことはなかったようです。
まあそういう問題はあったにしても、非常に読みやすいスッキリとした文体で、短編ということもあってとてもいいリズムで楽しんで読むことができました。これまでに読んだ推理小説とはひと味違う新鮮さを感じましたが、そういうところが受けているのでしょうか。中高校生にも難しくないと思うので、これを読んで理科系に関心を持つ人が増えるといいのに、なんてことも思ってしまいましたが…