χこれも一つの愛の形

というわけで、「探偵ガリレオ」に引き続き、現在映画も公開中の「容疑者Xの献身」を読んでみることにしたのですが、ガリレオシリーズの全2作が短編集の形になっているのに対し、この「容疑者Xの献身」はシリーズ最初の長編作品ということでだいぶ趣の違うものになっています。

容疑者Xの献身 (文春文庫)
著:東野 圭吾
文藝春秋 (2008/08/05)
ISBN/ASIN:4167110121

しかし実際には短編と長編との違いだけではなく、トリックの種類自体が大きく違うものになっていて、主人公らが同じというだけで「探偵ガリレオ」とは全く別の作品でした。「探偵ガリレオ」では先日書いた通り著者の理系的なというか、科学的な知識に基づく現実的なトリックが用いられていて、言い方を変えればある程度わかる人にはいつかはわかってしまうような単純なトリックだったのですが、この作品のトリックはかなり頭脳的なもので、相当頭のいい人でなければ解き明かすことはできないのではないかという物でした。私も「そういう手があったか」と思わず感心してしまうもので、極めて新しいトリックなのではないでしょうか。

今回のトリックも理系的と言えば理系的なのですが、前回読んだもののような工学的な要素はなく、理系でない人にも普通に読める一般的なミステリーに仕上がっていると思います。妻も短編の方はちょっと意味がわからないものもあったけれど、こちらは面白かったと言っていました。

まあしかし、推理小説については何を書いてもネタバレになってしまいそうで、紹介するのも難しいですね。「これは新しい」「面白かった」としか言えません。本当にこのトリックには参ったとしか言えないのですが、それも作者のミスリードにまんまと狙い通り引っ掛かってしまったせいで、うまくしてやられたというところでしょうか。この作品を読んで、ガリレオシリーズ以外の東野圭吾氏の作品にも俄然興味が湧いてきたので、とりあえずこのシリーズの他の作品のあとで読んでみようと思うのですが、図書館は順番待ちが455人とか…一体いつ回ってくるのでしょうか。