Leonardo Fibonacciこれを面白いと思えるかどうかが分かれ目。

高校や大学までに学ぶ数ある科目の中でも、数学が苦手という人は多いのではないでしょうか。いわゆる文系の人は言うに及ばず、数学が必須とされる理系の人でも好きではない、得意ではないという人は少なくないと思います。それはなぜか。イメージとして、数式をいじくっているだけの理論ばかりの学問で実践を伴っていないように思われている、ということがその理由の一つとしてあるのではないでしょうか。実際には数学が実生活に応用され役に立っていることは疑いようのない事実ですし、何より全ての科学・工学の基礎です。にも関わらず数学アレルギーを持っている人は多いわけですが、その源である「難しい数式」を全く使わずに数学の楽しさを説く「わくわくする数学 – 日常生活の中に見つける美と驚きの世界」という本を読んでみました。

わくわくする数学 日常生活の中に見つける美と驚きの世界
翻訳:岩谷 宏
ソフトバンククリエイティブ (2009/05/16)
ISBN/ASIN:4797350016

この本を読んで文字通り「わくわくする」かどうかは人それぞれなのでよくわかりませんが、この本では数学にまつわる楽しい話と、数学に基づくパズルが満載で、数学への興味をかき立てる話題が次から次へと登場します。しかし、数学の話をしていながら使われる計算は四則演算のみで、数式も極々簡単なものがちょこちょこっと載せられているだけです。

話題としては、トランプ手品の数学的な種明かし、紙を折ったり切ったりした場合に登場する数学、回文魔方陣数独三平方の定理フィボナッチ数、などなどが展開され実に多様です。ある程度数学的な知識を持っていたり数学的な思考に慣れている人には目新しい話題ではないものもあるかと思いますが、難しい理屈をこね回すことなく易しく解説されているので不慣れな人にも理解できるでしょう。特に中学生くらいの柔らかい頭を持った少年少女にはとても良い読み物になるのではないでしょうか。

こういう読み物を通して数学に興味を持って勉強することができたら、難しい数式もすんなり消化できるようになるのでしょうか。私の場合、中学生くらいまでは数学も嫌いではなかったはずなのですが、ただ公式を暗記してパターンに当てはめるだけというような形になってしまったあたりで興味を失ったような気がします。一旦興味を失ってしまうと勉強してもなかなか頭に入らないようになり、成績は落ちる一方でまたさらに興味を失うという悪循環でした。それでも一応理系へ進みはしましたが、結局今でも役に立つのは暗記させられた公式よりも数学的思考の方ではないかと思います。

この本に載せられているような数々の話題が、数学の教科書にコラムとして載せられていたり、あるいはある単元の導入部分に載せられていたりすると数学の勉強もより楽しくなるのかもしれません。何でも苦手意識を克服しないと身につくものも身につきませんから、その障害を取り除くにはもってこいでしょう。もちろん、これから数学を学ぶという人だけではなく、日頃学問としての数学とは無縁の生活を送っているような人にも知的欲求を満たす楽しい読み物になることでしょう。むしろ数学に苦い思い出を持つ人にこそ読んで欲しい、そんな本かもしれません。