CloudPebble素晴らしいとしか言いようがありません。

Appleがいわゆるスマートウォッチを開発しているというのはしばらく公然の秘密となっていましたが、ついに先月の発表会Apple Watchという名前で公の場に登場することになりました。同時に発表されたiPhone 6/6 PlusがAppleらしからぬ、というよりJony Iveらしくない何の変哲もないデザインとなってしまったのも、Watchの方にかかりっきりだったと考えれば納得できるほど、力の入ったデザインであることは覗えます。発売はまだ来年ということなので製品としての完成度は未知数ですが、実用性はともかく、とりあえず身に付けているだけで自慢できるアイテムになることは間違いないでしょう。

しかし私はこのApple Watchにはほとんど食指が動いていません。物欲旺盛なのは自他ともに認めるところですが、そんな私が心を動かされずにいるのは、昨年から使用しているPebbleがそれだけ素晴らしいからです。モノクロ電子ペーパーディスプレイなので画面の見栄えには劣るかもしれませんが、直射日光のもとでもはっきりくっきり見えるというのは時計というものには非常に重要なポイントです。バッテリーもそれほど大きな容量があるわけではありませんが、少なくとも2日は持ちます。またポリッシュ仕上げのApple Watchには見劣りがするかもしれませんが、そもそも価格が違いますし、樹脂製であるために非常に軽量で疲れません。

私にとって唯一の欠点は英文フォントしか含まれていないため日本語が表示できずいわゆる豆腐(□)になってしまうことですが、日本語が表示できるように改造したカスタムファームウェアが公開されていて、これをインストールすることで通知などは日本語でも表示できるようになります。文字種が1200と限られていることと、日本語は1種類のフォントしか含まれていないため異なる大きさなどは表示できないのが問題ですが、これでも嬉しいという日本語話者は少なくないでしょう。私も一旦インストールしてみましたが、対応しているフォントでは小さすぎて運転中などには読めないので用をなさないため、ファームウェアのバージョンアップを期に正規版に戻してしまいました。しかしながら、これ自体非常に素晴らしい取り組みだと思いますし、正規ファームウェアリリースの翌日には日本語ファームウェアもリリースされていて、その迅速さには感服しました。

さて、スマートウォッチのスマートたる所以は各種アプリをインストールして、様々な用途に使用できるというところです。Apple WatchでもWatchKitというSDK/フレームワークを使用してアプリを開発できることになっていますが、PebbleにもWatchApp SDKというものが用意されていて、これを使用して時計の文字盤を自由にデザインしたり、スマートフォンと連携したアプリなどを開発することができるようになっています。ただ、開発リソースの制約もあるのですが、このSDKは残念ながらインストールが容易ではなく、使い勝手もあまり洗練されたものではないためだれにでも使えるような簡単なものではありませんでした。しかし実はそれも過去のものです。今はCloudPebbleというウェブベースの開発環境が用意されていて、これが非常に素晴らしい出来のものであり、また今でも着実に進化を続けています。

CloudPebbleでプロジェクトを作成し、その中にファイルを作成して開くと、文法ハイライトにもしっかり対応したエディタを使用して編集を行うことができます。画像やフォントなどのリソースもアップロードして使用することができ、オフラインのSDKの機能は全て備えているのではないかと思います。私はひとまずプロジェクトを作成し、既存のソースコードをコピーして手を加えて文字盤を作ってみました。コンパイルもボタンを押すだけでCloudPebbleのサーバ側で実行され、オブジェクトファイルが作られます。そしてできたファイルはダウンロードすることもできますが、CloudPebble上の操作で手元のスマートフォンからアプリ経由でPebbleにインストールすることができてしまいます。特に難しい設定は何もせずに、コーディングから実機での実行までシームレスに行えてしまうというのは非常に驚くべきことです。

エディタに関しては使い慣れたものを使いたいという人はいるかもしれませんが、その程度であればファイルごとコピー&ペーストしてしまえば済むことです。またバージョン管理についてはGitHubとの連携にも対応しており万全です。既存のプロジェクトを簡単にインポートするような機能もあれば言うことないところですが、それも近いうちに対応されてしまうのではないでしょうか。

ということで、日本語さえ表示できればPebbleはもうApple Watchには十分勝てると思っています。そう遠くないうちに次世代機も出てくることになるのでしょうが、血迷ってカラー液晶にしてしまうような事はせず、解像度とメモリー容量、バッテリー容量を上げて高速化するというような堅実な進化を遂げてほしいものです。そしてその時はきっと私も新機種に買い替えることでしょう。