台湾にはあちらこちらに「新村」と名のつくところがあります。この「新村」とはもともとそのまま「ニュータウン」というような意味のものらしいのですが、その中には軍人の家族が住んだ「眷村」と呼ばれるものもあるそうです。現在はそのかつてのニュータウン的なものをオシャレに再生して、雑貨やファッションアイテムなどを売るエリアにしたりしているようです。台中の審計新村や、新村という名前はついていませんが台北の四四南村がその例です。ニュータウン跡ではありませんが、工場跡を再生した台北の華山1914文化創意産業園区など、台湾にはこうした遺構を再生して活用している事例が多いように見受けられます。
しかし、今回私が見に行ってきた中心新村というところはちょっと違いました。ここはもともと第二次世界大戦前に旧日本軍の療養所があった北投温泉に、終戦後に中華民国の軍人が移り住んで中心新村と名付けられたものだとのことです。1990年ごろには老朽化が進んでいましたが、文化を保存する目的で再生され、当時の暮らしぶりなどを物語る展示が綺麗に整備されています。
私が訪れたのが平日の午前中だったためか、他にいるのは台湾人らしき人々が数組だけで、それぞれ静かに展示を見て回っていました。私は台湾の歴史にはほとんど馴染みがなく、どのような歴史的背景があるのか理解しないまま見ていましたが、当時の生活を偲ばせるような展示となっているので、興味を持ってみることができました。また、壁や家具などがカラフルになっていて、それら自体が可愛らしいものになっています。
日本にも戦前からの建物などが残っていればこのような形で再生させることもできるのでしょうが、空襲で破壊されてしまったというものも多いでしょうし、そうでなくとも高度成長期に壊されてしまって残っているものはないのでしょうか。昭和ノスタルジーは日本でも人気が得られるはずですが、現在日本で見られるものはだいたい作り物なのが残念です。
なお、中心新村へはMRT新北投線の新北投駅から歩いて10分です。私はホテルそばから北投公園までバスに乗って行きましたが、この公園が駅前にあるのでどちらでもほとんど変わりません。