米の値段が急激に上がっていて問題となっていますが、最近、全国農業協同組合中央会の会長が現状の米の価格について「決して高いとは思っていない」と言ったとのことです。農家の立場からすればそれは確かにそうでしょう。米を育てるために必要な労力に対して農家が卸す米の価格が見合っていない、もっと高くてもいいのではないかというのはそうかもしれません。

しかし、そもそも日本の稲作というのが非常に不効率で高コストなものであるということは認識しなければならないと思います。狭い農地で大きな農業機械を使うこともできず、ちまちまと手作業に頼って植えたり収穫したりしているのですから、大規模な農地で日本にはないような大きな機械を使って作業しているアメリカなどにはコスト面で太刀打ちできるはずがありません。

普通に競争させていては安い輸入米がどんどん入ってきてしまい、日本の米自給率が下がっていってしまうので、さまざまな障壁を設けてそれを阻止していて、それは輸入制限であったり、関税であったり、またあるいは国産米とは品質が違うとか、輸入米は危険というような意識の植え付けだったりするのだと思います。

つまり、もともと日本の米の価格は海外に比べると非常に高く、それは非常時の食糧確保のため、すなわち国家安全保障上の理由だったわけです。現在はそれがさまざまな理由でさらに高騰してしまっていて、備蓄米を多少放出しようとしたところで手に負えないような事態になっているのです。

イオンカルローズ米を販売というニュースもありますが、これはまだ国産米よりちょっと安いという程度のようです。私がアメリカに住んでいる時は日本食スーパーではなくKrogerなど現地のスーパーで、California Roseよりも美味しいTamaki Goldなどを購入して食べていましたが、1ドル=110円程度の当時で日本で買う米の半額くらいだったと思いますし、味の方は私には全くわからないレベルで何の不満もありませんでした。日本のほとんどの人はカリフォルニアローズなんて食べたことがないと思うのですが、なぜ美味しくないと思い込んでいるのかまったく不思議です。いや、確かに少年時代にロンドンに住んでいた時に食べていたCalifornia Roseはあんまり美味しくはなかったような気がしますが、いわゆるタイ米などの長粒種ほどに違うものではないはずです。

価格が高騰している原因は買い占めや転売などいろいろあるにせよ、結局不作でもないのに価格が下がらないのはその値段でも買う人がいるからなので、それが適正価格なのだということもできるのではないでしょうか。ただ、それは米本来の値付けとして適正だというわけではなく、国の政策などさまざまな環境を含めてのものです。日本の人々が国産米にこだわるなら、現在の米の価格は不当なものとはいえず、もうこのまま下がらないかもしれません。

ただ、もし輸入米も自由に買えるような状況になったとしたら、高品質な国産米は輸出に回されて、安価な輸入米が国内で出回るということになるかもしれません。かつてイギリスには高品質な北海油田があるにもかかわらず、国内のガソリンなどは粗悪な輸入品でした。それは北海の石油を輸出して、安価な石油を輸入した方が利益が得られるからです。日本でも米で同じようなことが起こる可能性があり、この点は注意が必要です。