今日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)種子島宇宙センターから国産のH-IIAロケット7号機が打ち上げられ、搭載していた運輸多目的衛星新1号(MTSAT-1R)を無事に軌道に載せることができたそうです。前回の6号機の失敗以来、1年以上のブランクを経て、満を持しての打ち上げとなったのですが、厳しいプレッシャーを受けつつも見事に成功することができ、関係者はほっと胸をなでおろしていることでしょう。(いろいろリンクをたどっていると面白くて、ついついリンクまみれになってしまいます)

宇宙ロケットというと技術の集大成といったイメージがあり、冷戦時代には国威発揚に役立つということもあってか宇宙開発競争が盛んに行われていましたが、最近は専ら商業利用を目的とした開発になっており、コストを意識しながら開発を進めなければならないということで、以前とは違う厳しさがあるのではないかと思います。

他の民生技術に対するロケット開発の特徴的なところは、まさに一発勝負であるというところにあるといえます。当然要素技術や部品の開発については十分な繰り返し試験が行われているはずですが、実際に宇宙に打ち上げるには大変なコストがかかるため、予行演習を行うというわけにはいかず、また仮に失敗した場合にもそのまま回収するということができないため、通信では各種データを取得しているはずですが、十分な失敗データを収集することが難しいのではないでしょうか。結局は各部品が設計どおりの性能を出すことができれば、全体として設計どおりに動作して打ち上げを成功に導くことができるということになるので、一番難しいポイントは品質管理ということになるのではないかと思います。自動車などとは比較にならない数の部品のすべてが設計どおりの品質でなければならないということは、本来の日本の得意分野です。

「品質」というのは「どの程度仕様を満足しているか」ということですが、私が関わっている範囲では明らかに日本が世界をリードしています。ある部品について日本のメーカーのものと同程度の使用のものを海外メーカーも作っていたとしても、実際の製品の性能は日本メーカーのもののほうがたいてい上です。日本のメーカーは「いかなる場合でも仕様を満足しなければならない」というスタンスで十分なマージンを確保して設計・製造しますが、海外メーカーの場合には「仕様さえ満足していればいい」というスタンスであるようでギリギリの設計になっている場合が多いのです。製品の検査の際も同じスタンスなので、日本メーカーが検査基準を満足しているのは当然のものとして、どの程度のマージンが確保できているのかを確認するのに対し、海外メーカーでは基準を満たしていればOKとしてそれ以上の追求は行わないそうです。これは私が業務の上で実際に聞いた話ですが、その海外メーカーには日本と同様のスタンスを求めたということで今は日本メーカーと同じようになっているかもしれません。また一括りに「海外」といってもアメリカとヨーロッパとアジア諸国は違うでしょうからどこも全く同じということはないでしょうが、私が聞いたのはあるアメリカ資本のグローバル企業のケースです。

ということで、本来日本のお家芸ともいえる分野でなぜ6号機が失敗してしまったかということですが、十分に試験を行うことができるだけの予算が得られなかったため、というのが大方の見解のようです。前回の打ち上げの直前までは日本の宇宙開発は文部科学省宇宙科学研究所、航空宇宙技術研究所、宇宙開発事業団という3つの機関でそれぞれ行われていたため、効率的に予算を活用することができなかったようですが、2003年に宇宙航空研究開発機構という一つの機関に統合されたことが功を奏したのかもしれません。技術開発にはどうしても資金が必要になるものなので、必要な分野には十分な予算が配分されるよう、お役人と政治家にはメリハリの利いた税金の活用をお願いしたいものです。

なんにせよ、関係者各位、お疲れ様でした。5月からという気象衛星ひまわりの後継機の運用開始が楽しみです。また、今回の成功だけでは満足していてはダメで、今後も連続して成功させて信頼性を上げていかなければいけないということなので、ぜひ頑張って成功率を限りなく100%に近づけていって欲しいと思います。

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