アメリカ人は見ず知らずの人にも”How are you?”と気軽に話しかけて他愛のない話(small talk)を仕掛けてきますが、これはなぜなのかと考えたことがあるでしょうか。果たしてアメリカ人は総じてフレンドリーなのでしょうか。だとしたら、それはどうしてでしょうか。

私には一つの仮説というか持論があります。これは殺伐として油断のならなかった開拓時代の名残で、自分が敵意を持っていないことを示すとともに、相手が敵でないことを確認するためのプロトコルとして発展・定着したものなのではないかというものです。私の4年弱の短い駐在時代の経験から得たものですが、おそらく間違いないだろうと思っています。すれ違う人が銃を持っているかもしれない、それが何も不思議ではないアメリカの社会では、身を守るために必要な最初の防衛手段になっているのではないでしょうか。

そういうものなので、寡黙な日本人が無言で答えたりすると相手が何を考えているのかがわからず不安になり、恐怖すら抱くかもしれません。こちらが一見無害な日本人に見えたとしても、銃を持っているとなったら話は別です。いつキレて発砲してくるかもわからず、直ちに生命の危機に直面するわけです。四六時中そんなに緊張していては精神が持たないので、簡単なプロトコルとしてsmall talkが発展したわけで、こちらもそれに答えてあげるべきだろうと思います。

とはいえ、現代のアメリカではシンプルに陽気でフレンドリーな気質の人もいるだろうと思います。身近に危険がなく、フレンドリーな会話が飛び交うところで育ったら、普通に陽気な性格になる人もいるでしょう。ただ、元はどうだったのかというと、上記のような歴史的な経緯なのではないかというのが私の説です。あくまで私がそう信じているだけなので、本当かどうかはわかりません。ただ最近、単純にアメリカ人はフレンドリーだと思い込んでいるような人を目にしたので、気になって書いてみました。

もしアメリカへ行くことがあって、どこかのお店で店員に”Hi, how are you?”と話しかけられたら、「ああ強盗でないことを確認しているんだな」と思って”I’m good, thank you.”などと適当に返してあげてください。この会話は内容にはほとんど意味がなく、形式に意味があるのです。