とんど

今日は妻の実家の地区で「とんど」が行われるということで今年も家族で行ってきました。「とんど」というのは地域によって「どんと焼き」と言ったり他にも様々な呼び名があるようですが、正月飾りなどを焼いてその年の無病息災を願う習わしで正しくは左義長というそうですが、Wikipediaによると東京で行われていないのは江戸時代に火災予防のために禁止されたためのようです。そのため東京近郊で育った私には結婚するまで縁がなかった行事ですが、最近は例年その火に当たりに行くようになって年中行事化してきました。

そのとんども、この地区では今年が最後ではないかと言われているようです。近隣地区では既に廃止されてしまっているところもあるそうで、その理由は防犯・防災のためと、会場付近の住民からの苦情だということです。とんどが燃やされる際には消防団らの監視の下、万全の体制で臨むことになりますが、昼間に組み上げたとんどは夜まで無人の状態で置かれることになるので、それまでの間は愉快犯にとって格好の標的になってしまいます。実際数年前には隣の地区のとんどが昼の間に燃やされてしまうことがありましたが、管理されていない火というのは危険極まりないもので、負傷者がいなかったのは幸運だったとしか言えないでしょう。どこに異常者がいるかわからないご時世ですから、これは仕方のない流れなのかもしれません。

しかし、苦情でやめることになってしまうというのはどうも納得ができません。起源を遡ると平安時代にまで辿り着くというような古くからの行事を、それを知らずに転居してきたような人から文句を言われたということで取りやめなければならないものなのでしょうか。確かに夜になってから多くの住民が自宅の周りに集ってきて火を焚くというのはあまり気分のいいものではないでしょうが、もともとそれが行われているところに住み始めてしまったのは自分の方ですし、年に一度だけのことなのですから何とか我慢できないものかと思ってしまいます。

このことは、こうして世知辛い世の中になってしまっていくのかと実感してしまいますね。古くから続いているものが廃れていってしまうというのは寂しいことです。私自身も地域に積極的に貢献しているわけではありませんし、既に私の住む地区ではとんども行われていないようですが、これに限らず伝統を護るということを考えるべきかもしれない、と認識を少々改める出来事でした。