安心の定番シリーズ最新作。
007、James Bondといえばだれでも知っている、長年続くスパイ映画シリーズですが、なんと昨年には最初の作品の発表から50周年を迎えたということです。それを記念してシリーズ全作が収録されたBlu-ray Boxなども発売されていますが、23枚組というボリュームで値段の方もなかなか手が出しにくいものになっています。それでもそれぞれの作品がその年話題の大作となっているものばかりですから、かなり見応えのあるものなのではないでしょうか。
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本シリーズの最新作となる「007 スカイフォール」は日本でも12月1日に公開されますが、アメリカでは一足早くこの週末に封切られ、また都合のいい事にちょうど一人で時間をつぶす必要ができたので早速観に行ってきました。IMAXで上映されているものは極力IMAXで観ようと心に決めているので今回もIMAXですが、それでもたったの9ドル、今のレートだとわずか700円強です。ちなみに通常版は5ドルからありますが、この違いはいったい何なのかとこちらで映画を観る度に考えさせられてしまいます。
本作最初の舞台はトルコです。ここでNATO工作員の名簿が入ったハードディスクがノートPCから取り出されて奪われ、工作員の生命が危険に晒される、というのが物語の始まりになっています。勤務先で情報セキュリティをうるさく言われているせいで、どうしてそんなものを持ち歩いているのかと思ってしまいますが… その後場面はロンドンをメインに上海、マカオへと移りますが、ここから船で連れて行かれる島の外観に軍艦島が使われています。さすがに島内でのロケは危険なので上陸後のシーンはセットで撮影されたとのことですが、この島を知らない人が観た時の不気味さはこの世のものとは思えないでしょうし、よもやこれが日本とは思いもよらないことでしょう。
キャストは主役のJames BondにDaniel Craig、MにJudi Denchというのは前作までと変わらないところです。Danielの演じるJames Bondは初回から切れがあって好きでしたが、今回は若干年齢を感じさせるのはそういう脚本のせいでしょうか。JudiのMも最初は女性のMに違和感がありましたが、今ではすっかり馴染んでしまい、今は彼女の威厳こそまさにMに必要な物と思えます。またこの他、Qには新しくBen Whishawという32歳の青年が起用され、MI6にも新しい風を送り込んでいます。またさらにはしばらく不在だったMiss Moneypennyまで登場しますが、これはチョイ役ですね。
James Bondといえばいわゆるボンドガール、綺麗どころも欠かせないところですが、Jamesに絡む女性はNaomie Harris演じるEveと、Bérénice MarloheのSévérineです。Eveの方はMI6のエージェントなのでそれほど色っぽいシーンもなく、一方のSévérineは妖しさ満開ですがちょっとあっけないです。敵役のRaoul SilvaはJavier Bardemの怪演ですが、こちらは金髪に染めて怪しさ満開です。
またJames Bondというと秘密兵器もお楽しみの一つですが、実は今回はかなり地味です。でもそのおかげで荒唐無稽さが減って、この映画がリアルに感じられるようになっているのではないでしょうか。私はこれも悪くないと思います。その代わりに、ありあわせの武器に工夫を加えて敵を撃退するところがあり、これはこれで非常に愉快なのではないでしょうか。まあMacGyverほどではありませんけどね。
今作は50周年記念作ということもあるからなのか、過去の作品との関連を思い起こさせるようなところがところどころにありました。その最たるものがAston Martin DB5ですが、この車に乗った途端BGMがクラシカルな「ジェームズ・ボンドのテーマ」になるというのがますますニヤリとさせられるところです。またシフトレバーに仕込まれたトリガスイッチを見せるのもいいですし、然るべき所で仕込まれた機関銃を使ってくれるのもまた良しです。
ということで、スリルとサスペンスはもちろんのこと、随所にユーモアも散りばめられた、誰でも間違い無く楽しめる作品になっているのではないでしょうか。しかしちょっと気になったのはマカオのカジノのシーン、エキゾチックなアジアの演出がちょっと過剰ではないかと… まるで「007は二度死ぬ」での日本のシーンのようでしたが、まさかあれもわざと狙ってやっているのでしょうか。