外国語もいいですが、それは母国語がしっかり使えてこそのもの。

私もアメリカ赴任から1年が経過して、英語もほとんど不自由せずに使えるように…なっていると嬉しいのですが、年齢もあってそう簡単に上達するようなものではなく、この1年間ほとんど進歩はないのではないかと思います。一方、子供達は知らないうちに上達していて、レストランや商店の店員の言葉をなんとなくでも理解して、適当な返事を返していたりするのだから驚きます。1年前はほとんど何もわからなかったはずなのに、さすがに平日学校で英語漬けになっているだけのことはあります。

しかしまた、外国語の習得のためには、母国語での国語力がしっかり身に付いていることが必要だといいます。修飾語の係り受けや接続詞の使い方など、複雑な構文を理解し構成するためにはどの言語であろうと共通の能力が重要だということです。また、将来日本の社会で日本人として生活していくためには、日本語をしっかりと使いこなせねばなりません。そういうこともあって、子供達には沢山の日本語の本を読んで、国語力を自然に身に付けて欲しいと思っています。

ところで、日本の街なかでもふと耳にする日本語に違和感を覚えることがたびたびあります。「◯◯円からお預かりします。」であるとか、「〜でよろしかったでしょうか。」というようなのはよく言われる例ですが、多くの人が疑問に感じているのにどうして広まってしまい、一向に無くならないのでしょうか。そんなとき、「ひっかかる日本語」という本がちょっとした話題になっているのを見つけました。現代の日本語の細々とした疑問を拾って調査したり、とことん日本語にこだわった本のようで、これは面白そうということで読んでみることにしました。

ひっかかる日本語 (新潮新書)
梶原 しげる
新潮社
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著者は梶原しげる氏という文化放送出身のフリーアナウンサーということで喋りのプロの立場から商売道具にこだわってみた、ということになるでしょうか。内容は第1章がタイトルになっている「ひっかかる日本語」についてで、街なかやテレビなどで気になる日本語について、第2章は「脱帽する日本語」といなっていてテレビで手腕を発揮している池上彰氏や田原総一朗氏のほかカリスマキャバクラ嬢の喋りのテクニック、第3章「伝えるには知恵が要る」では読者の「伝える力」を向上させるための方法について、第4章「印象は口と舌で変わる」でもさらにそのアドバイスを続けています。

本のタイトルや帯につられて、日本語のおかしな使われ方を徹底追及しているものなのだと思って読んでいると、第1章が終わると「あれ?」と思うことになるかもしれません。実はこの本は日経BPネット日経BizアカデミーBizCOLLEGEの「梶原しげるの『プロのしゃべりのテクニック』」という連載に加筆修正を施して再構成したもの、ということなので、そもそもタイトルが主題とは若干ずれているわけです。それがわかれば納得出来ますが、ちょっとこのタイトルは「釣り」ではないでしょうか。なお、この連載自体は現在も続いていて内容はウェブですべて読むことができますが、やはり本の形になっていた方がスラスラと読みやすいので損をしたという思いはまったくありません。

内容自体はどのエピソードも非常に興味をそそられるものばかりで、全体的に実例を豊富に交えて語られているため、非常に説得力があります。私自身、人前でしゃべることは苦手ではありませんが、会話を盛り上げるというのは得意でないためなるほどと思うものが多々ありました。それを実際に応用するとなると簡単なものではありませんが、これらのテクニックは日本語に限らず英語でしゃべるときにも使えるものだと思うので、なんとか身に付けたいものです。