君の名は。色々無理はあるような気がしますが、それはそれで。

今年の夏休みの終わり頃である8月26日に公開されたアニメ映画「君の名は。」が大ヒットしていて、1か月経たないうちに興行収入が100億円を超えたということがニュースになりました。私の周辺では大ヒットしたように見えた「シン・ゴジラ」でも10月11日現在で77億円で歴代66位なのに対し、すでに歴代11位の145億円となっているのですからいかに幅広い支持を得ているということかと思います。ちなみに、この日本国内のランキングで歴代1位となっているのは「千と千尋の神隠し」で、このランキングの中でもつい先日観た「タイタニック」が2位につけていますが、7位に「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」が入っていて、この作品がここまでヒットしたとは知りませんでした。このシリーズにはまったく関心がなかったのですが、観ておかなければいけないかもしれないと思ってしまいました。

それはさておき、これだけ話題になっていると普段洋画ばかり観ている私でも気になってしまいます。幸い、Amazonでこの映画の小説版である「小説 君の名は。」のKindle版が安くなっていたので買って読んでみると思いの外面白くて、その後で本作のサイドストーリーである「君の名は。 Another Side: Earthbound」というのも読んでみてすっかりこの作品の世界に浸かってしまいました。となるともう映画も観ないでいるわけにいかず、ちょうど今週定期テストが終わったばかりの次男を誘うと1も2もなく二つ返事で行くというので、昨晩のレイトショーで観に行ってきました。

小説 君の名は。 (角川文庫)
君の名は。 Another Side: (角川スニーカー文庫)

映画の内容はほぼ完全に小説版と同じなので私はストーリーを把握している状態で観たことになりますが、それでもとても楽しむことができました。文章を読みながら自分が頭の中に描いた光景が、映像により補完されて整理されていくというプロセスはなかなか気持ちのいいものだと思うので、展開を知らないまま映画を観て新鮮な驚きを得るというのももちろん楽しいものですが、それは小説を読むときに体験できているのでこれはこれで私は好きです。

上映直後の次男の反応はというと、これまでに観た映画の中で2番目に感動した、何度も観る人の気持ちがわかる、何度繰り返しても楽しめそうだ、とのことでした。もちろんこの「2番目」というのが気になったので1番目は何なのかと聞いてみると、「HACHI 約束の犬」だとのことで、渡米間もないころに英会話の先生に英語で映画を観てみろと言われて観たところ、何かが彼の琴線に触れたようです。ともあれ、せっかく連れて行ったからには大変楽しんでもらえて嬉しいですね。

しかし、これだけ多くの人に受け入れられている作品をブログなどで公然と批判する人もいます。もちろん面白いと感じるかどうかは個人により違いますし、それを表現するのも自由です。しかし、文章の端々から「自分はこの程度で楽しめる凡人とは違う」という無意味な優越感が垣間見えてしまう人もいて、そういう人には自分には面白さを見つけることができなかったと恥じてもらってもいいのではないかと思ってしまいます。「展開が都合良すぎる」というのは私も感じないでもありませんが、そういうことにしておけばいいと思いますし、「説明されていないしわかるわけがない」というのはすべて説明されなければわからない想像力の不足、というより想像することを楽しむことができないのが哀れにも思えてしまいます。まあいいんですけどね、自由ですから。

実は色々とツメの甘いところは私も気になりはしましたが、そんな完璧な映画ばかりではありません。特にSF的な要素があると現実とは違うのでどこかしら破綻してしまうものですが、それらを許容しながら楽しむという寛容さを持てるかどうかが作品を楽しめるかどうかの違いなのではないでしょうか。せっかくお金を出して映画を観るのですから、つまらなかったと思うより面白かったと感じられる方がお得ですよね。