一気読み。
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COVID-19対応の自粛モードでは各方面で大変なことになっているかと思いますが、書店が閉まっていたり通勤するサラリーマンも激減していたりで、雑誌の売上も壊滅的ではないでしょうか。今はまだあまり注目されていませんが、そうなると日本が誇るマンガ文化にとっても厳しい状況ということになります。

そんな折に某所からの情報で、今Amazonで「ストップ!! ひばりくん!」のKindle版が0円になっているということを今朝知りました。「ストップ!! ひばりくん!」といえば「すすめ!!パイレーツ」と並ぶ江口寿史先生の代表作であるマンガ作品ですが、1981年から週刊少年ジャンプに連載されていたということで、ちょうど私が小学校高学年で周囲の友人らが少年誌を買って読み始めていた頃の作品ということになります。私自身はマンガ雑誌を今に至るまでほとんど買ったことがないので、この頃も友人から借りて読んでいたのだと思いますが、好きな作品だったのはよく覚えています。ちなみに私もマンガは昔から好きなのですが、一度読んだら捨ててしまうというのがもったいなくて、かといって置いておくのも非常にかさばるということで買わないだけです。

実際に無料になっていたのは全3巻のうち第1巻と第3巻のみで、なぜか第2巻は540円となっていましたが、ここで迷う必要はないでしょう。ということでポチッとしましたが、その直後から読み始めることができるというのは電子書籍の素晴らしいところです。

この作品は唯一の親族だった母親を病気でなくした主人公が遺言で託された先がなぜかヤクザの親分の家で、その家には3人の美人姉妹に加え、声も姿も美少女にしか見えない長男「ひばりくん」がいてややこしい生活が始まる、というものです。今であればLGBTに対する認知と理解も進んでいますし、つい先日記事にした漠ちゃんのようなケースもありますが、当時は女装や同性愛はそれ自体が笑いの対象になってしまうような社会背景だったので、もしもこの作品がいま出てきたとして同じように受けるのかどうか疑問ですし、批判の対象になってしまうのではないかとも思えます。ただ、この作品ではひばりくんはあくまで可愛く、文武両道の完全無敵な女の子として描かれており、ちゃんと読んだ人であれば悪い印象を持つことはないのではないでしょうか。

なお、この作品は連載中に週刊のペースを守ることができず何度も落稿や休載を繰り返した挙げ句、1983年に打ち切りということになってしまったようです。今回購入した「コンプリート・エディション」では2010年にラスト5ページを加筆してようやく完結したということですが、それでもかなり無理矢理な感じはしますし、それ以上にもっと続けてほしかったという名残惜しさが強い終わり方になっています。

江口先生の作品の一番の魅力は、描かれる女の子キャラクターの透明感ではないでしょうか。現在はイラストレーターとしての仕事を中心に活躍されているようで、Instagramでも先生の作品を見ることができますが、この非常に素敵な女の子たちは先生ならではのものです。書き込みはそんなに多くないのにパーツの配置が絶妙なのでしょうか。もちろん女の子ばかりではないのですが、ポージングも動きがあって、またパッと見て江口作品だとすぐにわかる世界観があって本当に素晴らしいと思います。

ということで今はなかなか難しい状況ですが、事態が収束したところで先生の個展がまた開かれるようであればぜひ行って堪能したいと思います。ただ実はちょうど1年前にすぐ近くの明石で「江口寿史イラストレーション展『彼女』」というのが行われていたというのを知って、今さらながらとても悔しい思いです。