昨日、自宅を出る直前に「そういえば今どんな映画をやっているのかな」と思いついて地元シネコンの上映スケジュールを確認してみたところ、巷で話題の「侍タイムスリッパー」が先週末からやってきていることを知ったため、急遽予定を変えて観てきましたが、評判通り非常に面白い映画でした。映画を観ながら笑いを堪えられなかったのはかなり久しぶりのことです。

この作品は普段はビデオ撮影を生業とされている安田淳一監督が自主制作で作ったもので、2600万円とされる製作費のほとんどが安田監督が個人として捻出したものとのことです。また、監督・脚本・撮影・証明・編集など数多くの作業に安田監督の名前がクレジットされています。

ムーブメントとして「カメラを止めるな!」の再来とも言われていますが、制作費はカメ止めのおよそ10倍ほど掛かっていますので、映画の面白さはともかく、カメ止めでは避けられなかったチープ感が本作ではまったく見受けられません。侍タイムスリッパーでは映像に影響のないところで数多くの工夫がなされているということなのではないでしょうか。

タイトルでもだいたい分かる通り、会津藩士の主人公、高坂新左衛門が長州藩士と対峙しているときに落雷を受け、その影響で2007年頃の東映京都撮影所内にタイムスリップしてしまい、そこで時代劇の斬られ役として活躍していく、というサイエンスフィクションかファンタジーかという設定のストーリーです。しかし、もうちょっと驚いてもいいのではという感じもしますが、バカバカしくは感じられないいいバランスになっているのではないかと思います。

出演している俳優の皆さんは無名と言っては悪いですが、誰でも知っているというようなレベルの人ではなく、渋めの実力派で固められていて、現実離れした美男美女ではないというのも逆にいいのかもしれません。それでも、高坂新左衛門役の山口馬木也は真剣な場面では凛々しく、とぼけた様子はそれはそれでいい感じですし、ヒロインの助監督山本優子役の沙倉ゆうのはとても魅力的な女性を演じています。またちょっと驚くのはこの沙倉さんは実際にこの作品の助監督にも携わっているということです。

ということで、自主制作であるということに注目してしまいがちなこの作品ですが、それを抜きにしても十分以上に楽しい作品に仕上がっているので、変な先入観や予備知識を持たずに観て楽しんでもらえたらいいのではないかと思います。