テンプル騎士団の遺産さしずめヨーロッパ版徳川埋蔵金

十字軍以降の中世ヨーロッパにおいて、聖地エルサレムへのカトリック教徒の巡礼の道中を保護するために設立されたというテンプル騎士団は、その戦いでの活躍だけでなく莫大な資産を築き上げたということでも存在感を示していたそうですが、フランス王Philipe IVの陰謀により壊滅させられてしまいました。このとき、巨額の資産のほとんどは密かに隠され、今もどこかに眠っているという伝説があるため様々な物語に謎めいた組織として登場しているわけですが、今回はそんな中の一作、Steve Berry著「テンプル騎士団の遺産」を読んでみました。

テンプル騎士団の遺産 上巻
著:スティーブ・ベリー
エンターブレイン (2007/01/31)
ISBN/ASIN:4757733860
テンプル騎士団の遺産 下巻
著:スティーブ・ベリー
エンターブレイン (2007/01/31)
ISBN/ASIN:4757733879

タイトル通りその隠された財産をめぐり渦巻く陰謀と、宝探しの推理と冒険が中心となっているのですが、主人公の一人Cotton Maloneがアメリカ司法省のエージェントだったりして様々な要素が盛りだくさんといった感じです。物語の前半は現在テンプル騎士団の本拠地となっている修道院内と、コペンハーゲンからフランス南部へと移動するCottonらの双方の出来事が並行して進んでいくのですが、それがちょうど下巻の冒頭で一つのストーリーに統合されます。「まさかそんな」というのが私の率直な印象でしたが…まあそんなに意外というわけではありません。

前半はちょっとダラダラした感じがあって私もなかなか進まなかったのですが、後半に入ると謎解きのペースが上がり、アクションの要素も強くなってくるのでそれなりに楽しめるのではないでしょうか。ただ、その謎解きもどうも強引なような気がして今一つ説得力に欠け、中途半端な印象が否めません。

あと重要なのはこの物語の肝心なところを理解するためにはキリスト教に対する知識がどうしても必要ということで、だいたい知っているという程度では何を言いたいのかがわからないのではないかと思います。まあ、単なる冒険小説として読むのであればそんな必要はないのですが、それでは全く面白くないでしょうね…私が読んで面白かったのかというとそれはまた微妙なのですが。