Inside Man私がいつも映画を観るときにかなり参考にしているのが★前田有一の超映画批評★なのですが、ネタバレなしにはっきりと作品の良し悪しを評じてくれていて、良きにつけ悪しきにつけそれに裏切られたと感じたことは一切ありません。その前田氏をして

ある程度の大人向け作品で、10代向けのお気楽娯楽に飽き飽きしている人々には、イチオシの一本なのである。知的な興奮を存分に味あわせてくれる、年間何本もない、必見の一本だ。これはぜひ、皆さんにも観ておいてほしいと思う。

とまで言ってしまったのが「インサイド・マン」なのですが、それほどの作品ならばぜひ劇場の大スクリーンで楽しみたいと思ったものの残念ながら私の家の近くでは上映されなかったようで観ることができませんでした。それがつい昨日DVD発売・レンタル開始ということになったので、いそいそと借りてきて平日にもかかわらず早朝から堪能してしまいました。

インサイド・マン
インサイド・マン

posted with amazlet on 06.10.13
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン (2006/10/12)

なるほどこの映画はなかなかのものです。クライムサスペンスなのでネタバレは禁物ですが、犯人はClive Owen演じるDalton Russelなる人物です。それだけは最初から分かっています。何しろ一番始めのシーンがRusselがそれについて喋る場面になっています。しかしそれがどこなのか、いつなのか、どういう状況なのかは一切明かされず分かりません。もちろん最後まで観れば「なるほど」と分かるようにはなっていますが、まずこれが大きな謎であり、観客を作品にいきなり引き込むことになるのではないでしょうか。

ストーリーは展開するたびに新たな謎を呼び、はっきりと解き明かされるものもあれば最後まで明確には解かれないものもあります。犯人の行動全てに意味があるのと同じように映画のシーン全てに意味があり、無駄なものは一切ありません。観客は感覚を研ぎ澄ませて観る必要がありますが、決して難解ではないので頭が痛くなるようなこともなく、最後まで夢中で展開を追うことになるでしょう。そして最後に謎だったシーンが全て繋がり、私は軽い達成感を覚えました。

キャストは先に挙げたClive Owenの他、主役の刑事役にはDenzel Washington、機動部隊の隊長にはWillem Dafoe、弁護士役にJodie Foster、銀行の会長がChristopher Plummerなど、一流俳優人のそうそうたる顔ぶれで、まさに一流の演技を見せてくれます。これで監督がSpike Leeだというのに日本ではあまりメジャーどころでは上映されず、あまり話題にも上らなかったというのは一体どういうことなのか、私にはさっぱり理解できません。プロモーションに問題があったのか、あるいは玄人好みで一般受けしないと判断されたからなのか、確かにディズニー作品のように大ブレイクするようなものではないと思いますが、映画館に足繁く通うような人であれば必ず満足できる一本に違いないというのに全く残念なことです。

ということで、私も多くを語ることはしませんが、「映画が好き」と自認する人であれば必ず満足できる一本です。私はとりあえずレンタルで観ましたが、何度も見返して味わいたいような素晴らしい作品だったので、改めて購入し手元に置いておきたいと思います。