Le Fabuleux Destin d'Amélie Poulain最近、平均的な人よりも多くの映画を観るようになった私ですが、観る映画は洋画ばかりで、特にハリウッドものがほとんどではないかと思います。ハリウッドのスタジオによる作品は豊富な資金が製作に注ぎ込まれ、また映像技術の粋を尽くされている作品も多いので、映像自体の完成度はかなり高いものとなっています。しかし、そういった金で解決できる部分とは別の、文芸としての映画の部分では必ずしもハリウッドの作品が一番というわけでもなく、たまにイギリス映画を観たりすると色々違いがあって面白いものです。

今回は、特に女性を中心に作品自体のファンも多く、以前から観たいと思っていた世界的なヒットとなったフランス映画、「アメリ」を観てみました。なお、原題”Le Fabuleux Destin d’Amélie Poulain”とはフランス語で「アメリ・プーランの素晴らしい運命」という意味だそうです。

アメリ
アメリ

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日本語の字幕はあるものの、フランス映画なので当然台詞やナレーションはすべてフランス語で聴いていても意味はさっぱりわからないのですが、映像に描かれている世界には不思議と英語よりもフランス語の方がマッチするような気がしてしまいます。とくに独特な調子で淡々と喋るナレーションはこの作品の重要な要素となっていますが、これはフランス語でなければ全く違った雰囲気になってしまっていたかもしれません。

劇中でダイアナ妃の事故死が報じられたりしているので、舞台となっているのは数年前のパリの街角のはずなのですが、今の日本の街とは全く違う世界にはノスタルジーすら感じてしまいます。特に携帯電話が全く登場しないという時点で完全に別世界です。携帯電話の普及により便利になったというのは否定しませんが、失ったものがあるのもまた間違いないのではないか、などということを考えずにはいられません。

主人公はタイトルになっているAmélie Poulainという22歳の女の子で、これは「ダ・ヴィンチ・コード」でTom Hanksと謎を追究してまわるSophie Neveuの役を演じていたAudrey Tautouが演じているのですが、実に可愛らしく、奇妙な隣人らとの絡みなどで見せるイタズラっぽい笑みが特に魅力的です。今となってはAudrey以外にはAmélie役は考えられません。

それにしてもこの映画は不思議な作品です。Amélieの部屋などはとても可愛らしく赤を中心とした原色でコーディネートされていたりして女の子向きの映画のようですが、ブラックユーモアや謎に満ちた周囲の人物像の奇妙さなどを見るとそういうわけでもなさそうです。またAmélieのイタズラは度を超していて違法な域に達していますし、空想と現実との境界も曖昧に描かれていて、何だかよくわからないところもあります。一度観たところでも楽しむことはできましたが、何度か繰り返し観てみると理解が深まりさらに面白いのかもしれないので、また時間をおいて観てみたいと思います。