身につまされること多々あり。
経済が世界規模で動くようになって、語学力、殊に万国共通語としての英語の能力が重要視されるようになっており、私の勤務先でも盛んに英会話教室など英語力向上の取り組みが行われています。私の現在の業務も欧米の技術者に会い、プレゼンテーションを受けるという機会の多いものになっているのですが、幸いなことに帰国子女の端くれなので少なくともヒアリングだけは人並み以上にできるようで苦労せずに済んでいます。
しかし、いかに外国語が重要になってきたとはいえ、社会人としてしっかりとした日本語を扱うことができるということが大前提です。ところが残念なことに、社内外の文書などを見ているととても見ていられないような酷い文章に出会ってしまうことがあります。もちろん誤字脱字という単純ミスは誰にでもあるでしょうし、上手い下手というレベルの話は私が偉そうに言えることではありませんから、ここで言うのは明らかに「間違っている」「おかしい」という表現や言い回しなどのことです。
学校教育では国語という強化の重要性は薄れつつあるのかもしれませんが、実は国語力というのはその人の教養の度合いを如実に表すのではないかと思っています。あくまで「教養」であって「学力」とは直接関係ないので、一流大学を出たエリートとされていても全くダメな人はいるでしょうし、その逆もまた然りです。結局社会に出てからは学力よりもむしろ教養の方がものを言う場合も多々あるでしょうから、そういう人はそれなりの立場に落ち着いてしまうのかもしれません。
ということで、私も手遅れになる前に再確認して軌道修正しておきたい、という意味もありますが、それ以前にこうして他人様の目に触れるところで文章を書いている以上、せめて不愉快な思いだけはさせないようにしたいということで「日本語の作法」という本を読んでみました。
著者は1923年生まれの英文学者、評論家、エッセイストの外山滋比古という人で、本書は日経ビジネスアソシエの連載コラムをまとめたものだそうです。連載コラムの体裁なので1つ1つは細かく切られたものになっていて、また語り口は木訥としていて変に堅苦しくないので読みやすいのですが、何となく老人の独り言を聴いているような感じを受けてしまいました。
とはいえ内容はなかなかためになることがあって、いい文章を書くコツとして
「同じことばをくり返さないことです。同じことばが出てくると、文章が後戻りしたり、停止したようになります。私は一枚の原稿用紙に同じことばを二度出さないように心がけています」
と答えたという作家の話や、
一般に日本語ではなるべく第一人称を出さないようにするのがたしなみであった。
というような件はなるほどと素直に受け取ることができます。
また、書き言葉だけではなく、話し言葉やスピーチ、また敬語の使い方や葉書の書き方などについてまで、幅広く日本語の、というより日本人としてのたしなみを説いていて、日頃なかなか教わることのない内容で勉強になりました。これが右から左へ抜けてしまわずに、しっかり身に付けられるといいのですが、それはなかなか一朝一夕にはいかないかもしれません。しかし「千里の道も一歩から」、何事も心がけが大事です。この本をきっかけに、まずは意識を改めて臨みたいと思います…って結局具体的なことは何もなし?