Watchmenスーパーヒーローも価値観はそれぞれ。

スーパーヒーローが主役のアクション映画で、しかもアメコミが原作というとSupermanSpider-Manを初めとするシンプルな勧善懲悪ものを思い浮かべてしまいがちですが、一方でBatmanのようなダークヒーローも人気があるというのは日本の漫画やアニメなどにはあまり見られないことではないでしょうか。おそらく日本の劇画に相当するグラフィックノベルという形で大人向けの作品としてこういうダークな作品が作られているようですが、その中の一つ”Watchmen“という作品も価値ある作品と認められているそうですが、それがまた映画化され「ウォッチメン」として今年3月に公開されました。

この映画版も高い評価を得ているようだったので私も大きなスクリーンで観たいと思っていたのですが、残念ながら自宅近辺の映画館では上映されず、涙を呑んだのでした。そして待ちに待ったDVD版が今週末ようやく、と言っても公開後半年なので十分早いのですが、レンタルを開始したので早速借りてきて観てみました。

ウォッチメン スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
監督:ザック・スナイダー
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン (2009/09/11)
ISBN/ASIN:B001NABQ1I

舞台となっているのはウォーターゲート事件をもみ消したRichard Nixonが5期目の大統領を務め、アフガニスタンを巡ってソ連との対立を深めるアメリカで、全面核戦争の危機が間近に迫り終末時計は11時55分を指している、というパラレルワールドです。この世界にはかつて正義の味方として仮面を付けたスーパーヒーローが存在していましたが、Nixonによるキーン条例なるもので覆面を着用して自警活動を行うことが禁じられてしまったため、彼らはヒーローを引退してしまっています。

このヒーローたちが面白いのは、一人を除いて普通の人間であり、驚異的な運動神経や知能を持っていたりはしてもそれ以上の特殊な能力は持っていないということです。しかし、その例外であるDr. Manhattanだけは、原子物理学の実験で事故に遭い、肉体を素粒子レベルにまで分解されたのと引き替えに、神にも匹敵する全知全能を手にしたという本当の超人で、この世界ではDr. Manhattanの活躍によりアメリカがベトナム戦争に勝利しているくらいです。

そんな世界で物語は終始ダークな色調の映像で進められるのですが、単純明快なアクション映画を期待して観た人にはなかなか手強いものになるのではないでしょうか。オチは私にとっては少々うならされるものでしたし、Dr. Manhattanのいうこともいちいち哲学的だったりするので観ている方も考えることを要求されます。そういうわけであまり一般受けするものではないと判断されて、原作の知名度が低い日本ではあまり上映されなかったのでしょうか。

どうやら予算の都合もあるようですが、出演の俳優陣がそれぞれキャリアを持つ人達ではあってもトップスターではない、というのもこの世界に現実味を持たせるために役立っているのではないでしょうか。Dr. Manhattan役にKeanu Reevesや、Ozymandias役にJude LawTom Cruiseの名前が挙がったりもしていたそうですが、仮にそれが実現していたとしたらこの作品の雰囲気は大きく違ったものになっていたのではないかと思われます。もしもDr. ManhattanがKeanuだったとすると、きっと「地球が静止する日」を思い浮かべずにはいられないでしょう。

ということでセクシーなシーンも多々あって子供と一緒に観るわけにはいかない映画でしたが、凡百のアクションヒーローものとはひと味違う、大人のための映画としてはなかなかのものでした。独特の世界観がやや観る人を選ぶかもしれませんが、少なくとも観て後悔ということはないと思います。