Life of Piある意味究極の3D映画なのかも。

突然映画づいてきた私ですが、昨日は一人で時間をつぶす都合ができてしまったので、また映画を観に行ってしまうことにしました。今度はしっかりクリップオンタイプの3Dメガネを持参していたので、満を持して3D版の「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」です。映画を観るときにメガネが必要な人にとっては、3D映画の場合にメガネを重ねて掛けないといけないというのはかなりネガティブな要素になると思いますが、このクリップオンメガネさえあれば不満はほとんど感じずにすみますので、私にはもうこれなしに3D映画は観られないのです。

さて、「ライフ・オブ・パイ」はインドのパイというニックネームの少年Piscine Patelが大人になってから取材を受けながらその半生を語る、という形で進められる物語です。主なストーリーの部分は、父親が経営していた動物園をたたむことになり、動物たちを連れてカナダへ移住するための航海の途中、嵐の中で船は沈没、パイは4頭の動物たちとともに荒波の中ライフボートで放り出される、というものです。

原作はカナダの小説家Yann Martelによる「パイの物語」として出版されているものですが、著者はインドにも在住経験があるようで、それでインドからカナダへということになったのでしょう。また、パイが載っていた船は日本の海運業者によるものらしく、ライフボートで見つかる小冊子や物資のパッケージなどにも日本語の記載が見つかり、また最後には日本人も登場します。

パイの物語(上) (竹書房文庫)
ヤン・マーテル
竹書房
売り上げランキング: 368
パイの物語(下) (竹書房文庫)
ヤン・マーテル
竹書房
売り上げランキング: 380

パイが乗るライフボートにはRichard Parkerが一緒に乗っているというのが大きな意味を持っています。このRichard Parkerというのは実は動物園で飼われていたベンガルトラの名前で、小さなライフボートに一緒にトラが乗っているというのはとんでもない話です。しかし、最初は単なる恐怖の対象でしかなかったトラが、大海の中の小さな社会で一緒に過ごしているうちに重要な意味を持ってくるのです。

なお、さすがに本物のトラを使って撮影するのは危険すぎて無理なので、完全にコンピュータグラフィックスを使って描かれているそうです。ナルニア国物語のCG制作を担当したスタジオを使用したそうですが、あのアスランよりもリアルに、という注文が出されたとのことで、確かに実写と見紛うほどの出来栄えです。しかしあんなに痩せ細るほど飢えているトラがそんなにおとなしくしているはずもなく、CGでなければありえない映像というわけです。他にも神秘的で美しい光景をいくつも見ることができますが、それらもまたCGなのでしょう。凪いでいる時の海面にまったく波が立っていないのが特に不自然に感じられたのですが、そんなものなのでしょうか。しかし一方で嵐の海はかなり迫力のあるものですし、クラゲの漂う夜の海も非常に美しかったです。

全体的には、やはり数多くの賞を受賞している作品だけあって、脚本、演出、撮影、演技などどれをとっても非常に良くできているのではないかと思いました。特に導入部分の脚本は一見無関係なようなシーンでもしっかりと伏線を張っていて、なるほどと感じます。また、今回3D版で観ましたが、まったく3Dであることを意識させられず、本当に3Dにする意味があったのかとさえ思ってしまいましたが、しかしそれだけ自然な映像になっているということでもあり、実は凄いことなのではないでしょうか。

しかし本当にこんなパイのような経験をしてきた人がいたとしたら、もう怖いものなど何もないでしょうね。